■ ストック・オプション税務訴訟 | Date: 2003-11-29 (Sat) |
納税者が税務訴訟を起こしても、以前は5%くらいしか勝訴することはなかったが、
昨年あたりから風向きが変わってきた。全国では20%、東京ではなんと40%の納税者が勝訴している。
とはいっても、実は殆どがストック・オプション絡みである。
ストックオプションとは、企業が取締役や従業員に対して、
一定の価額で一定量の自社株を購入できる選択権(オプション)を与えておき、
将来企業が成長して株価が上昇した際に、
取締役や従業員が一定期間内にその権利(オプション)を行使して取得した株式を売却すれば、
市場より莫大な差益を得ることができる報酬制度である。ストック・オプションは賃金ではないが、
ストック・オプション制度は労働条件の一つであり、
「労働者に付与されるストック・オプションは労働条件の一部であり、
労働基準法第89条第10号の適用を受ける」こととされ、ストック・オプション制度を設ける際には、
予め就業規則に定めておかなければならない。ストック・オプション制度は、
平成9年商法の改正によって労働者に対して当該制度を創設することが可能になったが、
有能な人材を確保しやすいことから、外資系やIT企業以外にも導入を検討する企業が増加している。
ところで、ストックオプションは賞与等の臨時に支払われる賃金には該当しない。
労働基準行政でも、「ストック・オプション制度から得られる利益は、
それが発生する時期および額ともに労働者の判断に委ねられている為、労働の対償ではなく、
労働基準法第11条の賃金には当らない」(平9.6.1基発412号)としている。
また、税法上の取り扱いについては、平成10年度税制改正により一定の要件に合致する場合には、
特例措置が認められ、権利行使時には給与所得として課税を行わず、
株式売却時に一括して譲渡所得課税として申告分離課税26%が適用されることになった。
ストック・オプションについては税務当局が当初、一時所得での納税と指導し、
現場の税務署でもずっと一時所得として処理してきたことだが、
ある日いきなり、税務当局側がこれは給与所得である。過去に遡って修正申告をせよ、
と主張し始めたから、さあ大変。多数の裁判が起きた。
確かに昭和60年5月6日付の週間税務通信1881号にも、
当時の国税庁審理室補佐名で「ストックオプションの行使利益は一時所得に該当する」との記事がある。
ストック・オプションの課税に関して、
かなりの数にのぼる審査請求が国税不服審判所に上がっているようだが、
国税不服審判所が不服請求を棄却する裁決を下すケースが多い。どのくらい支払う税金が違うかというと、
一時所得の場合、大雑把にいって半分が所得とみなされ、給与所得に至っては、
なんとおよそ八割が所得とみなされてしまうのだ。現状は景気のよい外資系やIT企業が多く、
金額も数千万〜億単位、この利益を給与の代わりに当てこんで就職・転職した人達も多い為、
当然、次のステップへと進んでしまうのだ。
不服審査及び税務訴訟について
税務当局が行った更正・決定・差し押え等の処分に対し、
不服がある場合、原則的に「国税通則法」による不服申立ての制度が設けられている。
国税通則法による不服申立ては、異議申立てと審査請求の二審制である。
税務署長などの処分に不服がある場合、まず納税者は税務署長などに異議申立てを行い、
その決定についても不服がある場合、今度は国税不服審判所に対して審査請求をすることが可能である。
(国税犯則取締法による通告処分に対しては、不服申立てが不可能)。
地方税については行政不服審査法の規定により、地方公共団体に対し同様の不服申立てを行うことが可能である。
異議申立てとは
異議申立ては国税についての不服申立ての第一歩であり、
国税庁長官・国税局長・税務署長が行った処分について異議がある場合には、
処分の通知を受取った日の翌日から原則として2か月以内に、
その処分をした国税庁長官、国税局長、税務署長に対して異議申立てをすることができる。
(注)青色申告書に係る更正処分については、異議申立てを行わずに、
直接国税不服審判所長に対して審査請求をすることができる。
国税不服審判所は、税務署や国税局などの行政執行部門から独立した機関で、
東京本部のほかに各国税局と沖縄事務所の所在地に12支部が設置され、国税審判官が審査にあたる。
審査請求とは
異議申立ての決定に不服がある場合は、不服申立ての第二段階として、審査請求をすることができる。
審査請求は、異議申立てについての決定の通知を受けた日の翌日から原則として1か月以内に、
国税不服審判所長に対して審査請求書を提出する。
税務訴訟とは
審査請求に対する裁決に不服がある場合は、
審査請求についての裁決の通知があった日から3か月以内に裁判所に処分の取り消しの訴えをすることができる。
納税者は税金に対する不服についても、
最終的には憲法により最高裁においていずれが正当かを決することのできる権利が保障されているが、
税務に関する処分の取り消し、変更を求める訴えにおいては、審査請求についての裁決を経てからでないと、
提訴することができない。
尚、税務訴訟は、一般的に更正処分の取消しを求めるものであり、
国税通則法、行政事件訴訟法に基く抗告訴訟である(行訴法3条)が、
実際の訴訟運営については民事訴訟の例によるとされている(同法7条)。従って、民事訴訟上の和解も準用される。