〜連縛パーティ〜 Date: 2003-11-12 (Wed) 
コラム
〜連縛パーティ〜  



ヒトミ女王様との奇妙な緊縛プレイ
どうしても主従関係のようなことが苦手なだ。だからSMというものにはどうしても違和感があった。とくにステレオタイプのSMスタイルは苦手で、「跪いて靴をお舐め」などというセリフを聞くと、噴き出してしまいそうになる。それは昔からそうで、卒業式や葬式などとくに厳粛な雰囲気のときに笑い出してしまうようなところがあったのだ。そのため、あの芝居じみたSMの世界がどうもダメなのだ。
しかし、このところSMも一般化してきたようで、居酒屋などでもお前はSなのかMなのかといったことが話題になる。よくよく考えてみれば、自分にはS性もM性もあるんじゃなかろうかとは思う。しかし、具体的なプレイでどういうことをしたいのかといえば、それは既存のSMの中にはないことに気づいた。
ただ、そんな中でも緊縛には少しだけ興味があった。そこで、SMのショーを見に行ったりしていたのだけれど、どうもそこで展開される緊縛はしっくりこない。縛られるのはMの女性であり、縛る側はSであるという暗黙の了解のようなものがある。僕などは女王様が縛られてもいいんじゃないか。あるいは、その場にいる全員が縛られるようなことがあってもいいのではないのかと思うのだけれど、そういうものに出くわしたことがなかった。
しかし、自分の中には何かモヤモヤとした思いがあるのだ。そんなことをヒトミ女王様(仮名)という職業女王様に話した。場所はある雑誌の忘年会の2次会だった。
「最近のSMクラブにはSとMを両方体験できるサービスもあるのよ」
 彼女は親切にもそう教えてくれた。いや、しかしそれもやはり違うのだ。きっと最初から自分がSで相手がMというように立場が決まっているのがいやなのだ。そこで僕が
「たとえて言えば野球拳のようなSMがしたいんだよね」
 彼女は興味深そうに聞き入ってくれる。周りの声がうるさいので、僕は彼女の耳元で少し大きな声で話した。
「つまりさ、ジャンケンで勝った方が縛って、負けた方が縛られるというようにさ、偶然性によってSやMの立場が決まる方がドキドキしない?」
彼女の目が輝いた。


「そうなのよ。私、もともとSMが好きでこの仕事を始めたんだけど、なんかワンパターンでSM嫌いになっちゃいそうなんですよ」
「それじゃちょっと新しいSMを模索してみようよ」
こんな感じで僕らは盛り上がり、なにかプレイをしようということになった。
あらかじめ何かを決めておくのもつまらないので、とりあえず会う日だけを決めた。そして、平日の昼下がり、僕らは都内の喫茶店で待ち合わせをしたのだ。
「何も道具を持ってきていないから、買いに行こうか」
 ヒトミ女王様はそう言いながら、近くの手芸店へ。そこで僕らはいろいろな色の紐をたくさん買った。
 それから僕のホテルに向かう。何も決めていなかった。とにかく僕らは野球拳をして先に彼女が全裸になった。そこで大量に買い込んだひもで。次に負けた方を縛ってみることにした。縛るといってもこれまでSM雑誌に載っているようなきれいな縛り方ではなくただぐるぐる巻きにしてはどうかという彼女の提案で実行に移したのだ。とても楽しかった。SMとはこうでなくてはいけないというものを全く無視してあれこれ遊んでみた。僕も縛られたけれど、雰囲気は和気あいあいとしていた。さらに今度は2人一度に縛られたらどんな感じなんだろうか。やってみることにした。何かあってはいけないからとテーブルの上にはさみを置いて裸で抱き合ったところで縛り始めた。さっきも言ったようにきちんと縛るのではなくぐるぐる巻きだからすぐ簡単に縛ることができた。ところが、本当にガチガチに縛ってしまったのでお互い立ったまま動くことができなくなってしまった。もしものためにはさみを置いたテーブルもこういう状態でははるかかなたにある感じである。とにかく歩くことができない。僕らは縛られたまま少しずつ移動した。手前に電話機がある。もしこれにあたって受話器が外れたらフロントから人が飛んでくるだろう。こんな状態を見られてしまうのはなんとも情けない。慎重にしかも倒れないように僕らは少しずつ移動した。ほんの3メートルぐらいの間を30分ぐらいかけて移動したように思う。ハサミのところまで来てもこれを手にとって切るまでがこれまた時間がかかった。
 こういう予測できないドラマが生まれるからこそおもしろいのだ。
「いやぁ、面白かったねぇ」
 そう言うと、彼女も同意した。そしてさらに
「もっと大人数でやれば、もっとおもしろいんじゃないの」
 なるほど。つうわけで、僕はそれを実行に移すことにしたのだ。


というわけで、連縛パーティへ
しかし、こうして1人を縛るんじゃなくて、何人かを一度に縛る形式をなんと呼べばいいのだろうか。ヒトミさんと話しているうちに、それは「連縛」ではないかという言葉が出てきた。たしかに単独の人間を縛るというわけではないんで、これはいいかもしれない。
さらに英語では"BIND"という言葉が出てきた。辞書でひくと「縛る」といった意味があるという。日本語では「バインダー・ノート」というのがあるけど、それが意味としては近いみたいだ。SMとは別の次元での縛りや拘束感を楽しむという感じのパーティをやろうということになった。
たとえば、それはぎゅうぎゅうと人と人がおしくらまんじゅうする感覚だったり、また、昔、アメリカの大学生の間で流行していた電話ボックスに何人は入れるかを競うような窮屈感だったりといったような楽しい拘束である。もちろん緊縛なども楽しい要素があっていいはずなんだけれど、日本の場合、それはすぐにSMと結びつけられてしまう。つまり、常に縛る側と縛られる側が決まってしまったり、そこに主従関係が生じることになるのだ。BINDはそういったものとは無縁なのだ。
 早速、潜入してみることにした。場所は都内のラブホテルにあるパーティルーム。参加メンバーは、女王様ライターの立花マリさん、アダルトショップ「パンドラ」の店長南春介、会社員のT、そしてヒトミ女王様がやってきた。
ルールは各人が他のメンバーを使って、自由にBINDした作品を作ってみるというもの。まず最初に手を挙げたのが、立花マリ女王様だ。彼女は、ホテルの部屋の踊り場で、南氏とT氏という2人の男性を連縛(BIND)した。タイトルは『丸井のクリスマス』。鎖などを使って、熊のぬいぐるみなどもいっしょにBIND。一般人であるTクンは、写真を撮るなら目線が必要だと言い出したので、黒いビニールテープで目のまわりをグルグル巻きにした。その上にヒトミさんが白目と黒目を貼り付ける。なんとも気持ち悪い顔になった。南氏がしきりに「こっちを見るな」と言う。
さて、次はさっき被害にあったT氏の「作品 B」。彼は透明のレインコートをヒトミ女王様に着せて、それを赤と白のビニールテープで拘束していく。タイトルは『寿』だった。


 次の作品はヒトミ女王様。立花マリ女王様とT氏を背中合わせにし、バスタブの中で縛っていく。この縛り方はけっこう巧妙で、背中合わせなんだけれど、お互いがお互いの乳首にタッチするように手が固定されていたりする。さらにボディペインティングなどを施し、そこに徐々にお湯を入れていく。題して『愛の水中花』だとか。
 このとき、1人出番のなかった南氏は踊り場のスペースにビニールテープを張り巡らせていた。それはあたかもクモの巣のようなかんじである。そこに捕らえられたというような形でヒトミさんを縛り付ける。このタイトルは『エジキ』だそうだ。
 というわけで、一通りいろんな連縛(BIND)を行ったあと、いよいよマグロの作品。男2名、女2名の全員参加だ。まずは、男女それぞれをガムテープで拘束した。男性の背中から女性が抱きつくようにして胴体や足を固定していく。男性陣は、まんざらでもない様子だ。2対のカップルができたところで、今度は男同士で正面から連結することにした。「やめてくれーっ」と南氏が本気でイヤがる。4人を電車ゴッコのように一列にしてロープでグルグル巻きにしていくのだが、どうしても南氏がイヤがり、T氏との股間があいてしまう。そこを密着するように縛っていく。女性陣はおもしろがって、前にいる男性を腰でぐいぐいと押すので、やっと4人が密着することができた。タイトルは『ミルフィーユ』彼らは僕が写真を写す間ずっとそのままの体勢でいなければならなくて、南氏は「早くほどいてくれぇ」と悲痛な叫びをあげる。
 以上、全作品を紹介したが、いやあおもしろかったね。これまで、たいていの場合、縛られると言うと女性だったりM男だったりしたわけだけれど、参加者全員が縛られるパーティというもの、なんだか楽しい気がする。

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