■男はつらいよ!! 墓次郎ネットで騙される編(5) |
「もしもし。もしもし??」
困惑し怯えたようなアキが辺りを更に見渡すし、受話器に向かって声を発する。怖いのはこっちだ。2週間にも渡り、メールをやりとりし、架空の人物とは言えアキに対して慰めの言葉やでっち上げ、彼女との問題などを相談していたと思うと、本当に背筋が寒くなるぐらいの人物。筆舌に尽くしがたい彼女だがあえてたとえるなら、映画「リング」の貞子をもう少し人間らしくした感じとでもとでも言おうか…。この原稿を書いている事で呪いが掛らないようにと、真剣に祈る程である(怖いので後ろを振り向いてしまった)。
結局、そのまま電話を切り(もちろん電源も。いつもよりしっかりと押してね。)、貞子が目の前をすぎていくのを確認してからゆっくりと車を出し、その場を離れた。運転席の友人は、「俺、目があったんだよね…。」と、まるで幽霊にでも遭遇したかのようなうつろな目でボソッと呟いた。今思えば、あの悪球(貞子)を場外(一夜を過ごし、イカせる事)へ運ぶ事が出来たならば、間違いなく自分はメジャーリーグ(風俗天国ジャパン)に歴史を残す程の名選手になったであろう。この一件があって以来、MSNチャットには出入りしてません。
巷にあふれるチャットでの成功事例を目にするたびに、ピクリと反応はするが、触手はそれ以上伸びない…明らかに貞子の呪いを恐れての事だ。
結局、テレクラと同じようにインターネットという手段を通じて、相手を絞り込んでいくとなると、モニターの向こう側にどんな奴が座っているのかについては、文体とか話す内容で推測するしかないのである。しかも、文面から相手を想像するのは非常に危険度が高い。たとえば何でも無い、「今日は仕事で色々あったのでちょっと落ち込んでます。グスン。」等という内容のメールがあると、なぜか激しく「慰めてあげなければ…。」という使命感に駆られてしまう。「きっと彼女の上司は、彼女に好意を寄せていて、でもそれが全然伝わらずにかえってつらく当たってしまう。常に人と上手につきあおうとする彼女の性格では、そんな上司の仕打ちがことさら身にしみてしまう。よし、今日はたっぷりと慰めの言葉を並べてやるぜ。」こうなるともう、妄想を通り越して病気である。
悲しい事実を分析し、ネットでの求人活動にピリオドを打った。
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