JR岐阜駅の北口を出ると地方都市特有の光景が目の前に広がっていた。駅ビル自体はここ何年かで新しくなったのであろう、およそ周りの風景とはそぐわない近代的な大きな造りで、放射状にのびている道を歩いて駅から遠ざかるにつれて「田舎度」が増していく。至って平和な午後だが、これから向かう先は東海地区の風俗メッカである金津園。平和な午後にそぐわない、下心を抱きつつ駅を後にする。

駅を出てすぐに右に折れると大通りがあり、道の向こう側が「性地」でこちら側がただの「整地」。前を向いてまっすぐ歩き通行人を装いながら、視線は反対側の歓楽街に釘付け。今日の射精場をしっかりと吟味しにかかった。午後の中途半端な時間帯だったので、店の前に立つ客引きも従業員と立ち話をしたり、所在なさげに手にしたほうきで道を掃いてみたりと、時間をもてあましている様子。こういったときに、店の前を通りかかろうものならインドの物乞いに劣るとも勝らないしつこさで、5メートルおきに行く手をふさがれてしまうのは想像に難くない。ということで、風俗街につながるメインストリートをやり過ごし、歓楽街の終わりのあたりから入ることにした。地の利を生かした店よりも、通りのはずれに位置した店の方が往々にしてあたり度が高い、という余り信憑性のない情報をしっかりと信じ込んでいる節があり、地方での飛び込み取材についてはほぼこの鉄則を忠実に守っている。

　一大エリアの終わりのあたりに横断歩道があり、性地へ裏口より進入する。通りに入ってすぐの店先で早速客引きに声をかけられた。
「さぁ、いらっしゃい。お客さん本日はもうお決まりで??」
「いや、今日は運が良い!!当店ナンバー１が今ならすぐご案内できます!!」
彼らにかかれば、通り過ぎていく人はみな運が良いことになる。とりあえず軽くあしらいながら、システムについてだけ訪ねてみる。
「当店はVIP店ですので120分、8万円からとなります。」
「・・・・・・。無理ですね。お金そんなにありません。」

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