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風俗情報

 ■エロ業界Q&A(28) Date: 2004-01-08 (Thu) 
【ご質問】
 
カモンさんお元気ですか?30周年おめでとうございます。自分はゆくゆくカモンさんのようなフリーライターを目指しています。現在いわゆるエロ出版社と呼ばれる会社で、編集員を努める若輩者であります。カモンさんは独立した当初と今とで原稿の書き方に変化がありましたか?また、業界30周年の達人ということで、文章だけを読んだだけで未熟者と10年選手、20年選手の区別がつきますか?そして最後に、いわゆる刑法上のワイセツ事件(や盗撮問題・名誉毀損など)でもで、最近自分は警察が動く動かないにありがちな法則があるような気がしてます。カモンさんクラスの達人ライターは、この法則をすでに見破ってると思いますが、この辺の動向を教えてください。(千葉県千葉市/出版・会社員/28歳)

【ご質問に対するお答え】
 ご丁寧なお祝辞、誠に有難うございます。といっても現実問題として、毎月やることは同じなので、そう深い実感はありません。朝起きて、「東京新聞」「東京スポーツ」「内外タイムス」の三紙に目を通し、必要な記事は切り抜いて赤のボールペンで日付を入れ、一カ月分、日付け順に重ねておきます。外出した時は必ずコンビニか本屋に立ち寄り、これまた必要な本を購入します。前に書いたかもしれませんが、これだけで毎月5〜7万円はかかってしまいます。で、新聞の切り抜きが終ると朝食(兼昼食)を摂って、パチンコに行きます。(笑)。パチンコというのは、それがうまい方法なのか下手な方法なのかは抜きにして、2〜3万円消費するに、大抵は、2〜3時間でカタがつきます。全額負けたり、半分戻したり、元になったり、+1万円になったり、+2万円になったり。小爆発台だと、高円寺の場合、3時間以内で10箱近く(それぞれだいたい12〜13箱で停まる場合が多い)いくこともたまにあります。
 オフの日は、半日以上いるということがありますが、だいたい3時間、長くても4〜5時間でなるべく切り上げるというのが、筆者のやり方です。投入額も、めったに3万円までは行きません。2万円以上になると返すことが難しくなるし、2万円投資して3万円(6箱)になっても、儲けは一万円。粘ってさらにすることはできますが、時間も倍はかかってしまいます。従って筆者は+1万円を小勝(小吉)、+2万円を大勝ち(大吉)と考えていて、時には運よく5万、6万と勝つ事も有りますが、そういう場合は負ける時も5万、6万と「なりがち」ですので、買っても負けても投資を2万円以内に抑えて、勝ちを長びかせる方法を取っています。本来の「賭博」という概念からすれば、こういうセコいやり方は、博打の風上にも置けないやり方なのですが、一気に負けて当分できなくなるより、少しずつ負け続けてもいいからわずかでも挽回の芽を残しておく(=希望を持ち続ける)というのが、私流のやり方です。
 有名な時代劇「眠狂四郎」を生み出した故・柴田練三郎は、驚異的な原稿料の伝説をもっていました。嘘か本当か知りませんが、「一文字5000円」というのです!400時詰原稿用紙で200万円になってしまいます。エロ本のライターは、今は業界がどうなってるか知りませんが、筆者が原稿を書き始めた昭和50年(74年)前後は、通称「500円ライター」と呼ばれていました。エロ本の場合は、400字詰ではなく、これも通称ペラといいますが、200字詰一枚で500円。1本のテーマにつきペラ20枚というのが平均ですから、ちょうど1万円。従って月にレギュラーを15〜20本抱えないとやっていけず、これでも男1人が暮らしていくにはカツカツです。ちなみに筆者のような大ベテラン(笑)になるとどれくらいの原稿料をとってるかというと、倍の1,000円となります。一番払いのいいところでも、1,500円で、少なくもエロ本では、これ以上は望めません。少し古い人達ですが、団鬼六とか丸茂ジュンとか、愛染恭子とか、エロ分野とはいえベテランの男女作家諸氏や、エロ業界にその名の轟いたポルノ女優や有名AV嬢なら話は別でしょうが、いくら平加門が(ごく狭い業界で・笑)名は知られてるといっても、こんなもんです。しかも、筆者などは(恐らく)かなり運がいい方なのだと思います。
 つまり筆者は、一文字50円デス(笑)。柴田練三郎は5、000円。この差!(笑)。そんなわけで、柴田練三郎はこちらはパチンコでなく競馬でしたが、1レースに100万も200万もつぎ込んだそうです。それも大穴ばかり。本当のギャンブルとは。こういうものじゃないでしょうか。夢のような話ですよね。
 そうこうしてるうちに夕方(パチンコが長引いた時は7時8時になることもある)になり、買い物をして帰り、遅い夕食を摂って、通常午前2時ぐらいまで、仕事が忙しい時は午前4時ぐらいまで執筆しますか。そして月末、1ヶ月分貯まった切抜きを元に、(オレンジ通信)(東京三世社)や「アップル写真館」(大洋図書)の月間事件月評と本文を、また「アップル通信」(三和出版)の事件系本文を書きます。さらにまた、毎月15日〜25日の間は、「ビデオ・ザ・ワールド」(コアマガジン)のレビューを集中的に書きます。そして、隔月ですが、これも事件系の文章を、「お尻倶楽部」(三和出版)に書いてます。幸いなことに、この単調な生活が、ここ10年ほど、変わっておりません。これらは筆者が何かをしたというよりその本が休刊や廃刊にならないよう、ずっと努力をなさってきた編集部の人々が偉いんであって、筆者の尽力など微々たるものです(むしろ迷惑をかけてることの方が多い・笑)。
 といっても「読者」あってのライターですから、それなりに努力も必要なわけですが、筆者が心がけているのはたった一つのことだけです。できる限り「前のものより面白いことを書く」。この面白いというのはもちろん笑わせるということも(1つの手法として)含まれてはいますが(読者の)記憶に残ることを書くというのでしょうか、少し違うな、記憶に残ってくれたら有難いといいますか、それを目標にして書く、ということですか。エロ本といえど、それは「裏文化」の資料的な意味、あるいは記録という(本当は)大変な重責のある部分を有しているので、筆者が心がけたことの最初は、絶対に「使い捨て」にはさせないぞ、と(笑)。全国にわずか1人でも2人でもいいから(笑)筆者の書いた文章を保存・保管しておきたい、と思う人が出たら、当面の目標は達成できると考えました。筆者自身が資料やデータをなるべく取り入れているのはこのためです。引用が多いということに関して批判があるのは百も承知で、しかし、データと引用はなるべく多くしています。なぜなら、他のことで資料や引用を多く出す文章を書くと手抜きに思われますが、ことエロに関しては、その人の意見も考えも生き方も、時に嘲笑され、軽んじられ、常に世論や当局から封殺されてしまうという特殊な分野だからです。幸いなことに今は昔よりかなりオープンになって、ポルノも性風俗もどんどん本音や実態が出てきました(それでもガセや宣伝的な文章は多い)。だからこのことで以前ほど肩に力を入れてはいませんが、筆者のスタンスは1つのスタイルになってしまっているようなので(笑)、今後もこれは変らないと思います。そういう意味では筆者の文章は昔から、殆ど変わってないと思います。「戦争反対」及び「暴力」反対、性解放?ポルノ解禁。この二つしか頭にないです(笑)。いや、四つか(笑)。他のことも多岐に書いてはいますが、それらはこのことから派生しているに過ぎません。そういう意味では筆者は、極めて普通というか常識的というか平凡で、ちょっとだけスケベ(笑)です。
 文章に関して未熟者だとか10年、20年選手がわかりますかとのご質問ですが、未熟な文章でも魅力があったり、大ベテランが書いているというエッセーなどでも、全然面白くない場合があって、一口に言えませんね。もし差があるとすれば、僕らはだいたい性風俗に行って、同じようなコから同じようなサービスを受けているわけです。そして(こういう表情は女の子達に失礼だけど)アタリ・ハズレがある。運もあるけどだいたい、みな同じような印象を抱くはずです。その感じたことを時に面白おかしく、時に怒りを持って真実味あふれた文章で書けるかどうか。初心のライターさんとベテランのライターさんの差は、ここだけじゃないですか。風俗などのライターは特に、読者にその風俗の疑似体験を味あわせ、さらに誰もが感じているであろうことをうまく「代弁」できてる人が名手だと思います。さらにいえば、その手法なり表現がより「その人独自」の方法であれば(=つまり他人には真似できない絵でいえば描写、文字でいえば文章力であれば)、それこそが達人の域に達しているといえます。そういうものが出るのはやはり、センスだと思います。センスは日本語で才能と訳したりしますが、筆者は余りそうは思ってなくて、勘も運も才能も努力も全部ひっくるめて、何かその人の持っている「感じ方」(=自ずと接し方にも表れてくる)が全てだと思っています。
 それを磨くことは常に心がけねばならないけれども、努力したからといってその成果がそう易々と目に見えてくるものでもない(短期にそれが目に見えたとしたら、それは努力の賜ではない)。苦しみ、悩み、悶々としながらも、ひたすらそれに向かって努力だけは続けて行かなければならないこと。つまりこれはテクニックの問題ではないんですよね。大袈裟に言うと「生き方」。もうそのまんまですよ(笑)。文章がうまいか下手か、分かりません。才能があるかどうかも分かりません。とにかく書いてみて、まだ続けたいなら書いてみる。結果は誰にも分からない・・・・・。無責任なような言い方をすれば、運を天に任すみたいな部分も、かなり有ります。エロ業界は特に、面白い人やユニークな人、とんでもない人(笑)まで、多岐に渡っています。で、みんなそれぞれに文章を書かせたら面白いのになと、筆者などはよく思うのですが、その人の実態や生きさまは面白いんだけれどもそれが秀れた写真家や秀れた小説家や秀れたライターの表現を通してさらにその面白さがハッキリクッキリする場合がある。その面白さが「文化」です。文章力とか表現力と人はよくいいますが、むしろ、脚色力というか、各ライター諸氏の差はこれだと筆者は思っているんですよ(自分にそれがどれだけ出てるかどうかは未だに自分でも分かりませんが・笑)。言葉の「味付け」ですね。筆者にはそういう(それこそ)一種の才能みたいなものは欠けているので、心がけているのは、自分の気持ちを自分の言葉(肉声に近いものにする)で書くことと、書きたいと思う気持ちを絶やさないこと。あらゆることに興味と好奇心を持つことですかね。新人のライターの方の文章だって、すごいことが書いてあれば、他紙だろうと何だろうと(編集部の迷惑も顧みずに)平気で自分のレギュラー原稿に紹介しちゃったりしますもんね(笑)。
 なお、最期のご質問の警察の動向ですが、これは分かりません。見せしめとして摘発する(特にポルノ)や性風俗はこれが多いです)ということと、暴力団関係の関連摘発以外なぜ、どう摘発に至ったか、報道ではいつも不明です。少なくとも筆者には「法則」なるものがあるかどうか、さっぱり分かりません。また、全国の警察によって摘発の対象も方法も異るのでは。それが証拠に、当局の摘発の中には「公平さ」を欠いたものも少なくありません。まっとうにやっていた風俗店が摘発を受け、暴力団系のそれが野放しとか。単純に類推すればそこに癒着も感じられますが、それもこれもケースバイケースのような気がします。事件関係のことを書いているのに随分と無知・無学・無権式のように思われるでしょうが、筆者の興味はやはり「犯罪」と言うこと自体と、犯罪者が生まれる「社会」に興味が向いていて、警察の権力は不快だし不祥事には頭にくるけれども、警察力の(それ自身の内部の腐敗を含め)弱体化していくことの方が大問題だと思っています。

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