■ ナンパ地獄変(12)-4 |
だいたいこの時間にぶらついてる娘などヒマに決まっている。皮ジャケットを着たお姉さん風に、すれ違い様声をかける。
「なにやってんの?」
「えっ、いえ、お昼ご飯食べようと思って」
「あっいいね。オレも一緒に食べていいかな…」多少強引なやり方だが、ナンパはそれくらいが丁度いい。パルコ裏の公園でサブウェイのハンバーガーをパクつく。ちょっと寒いが、天気がいい日は外で食べるのも気持ちいい。
洋子(二十一歳、雑貨屋勤務)だが、この後二時から仕事が入ってるらしい。なかなかいい雰囲気であったが、まっそういうことであれば仕方ない。
洋子と別れた後、またスランプが訪れる。どうしても午後三時前後というのはナンパしにくい時間帯なのだ。かといってこの時間帯はテレクラの鳴りも極端に弱い。
しかし四時を回った頃、看護学生の由美子(十九歳)が網にかかった。まぁそれほど可愛いというわけではないが、ノリが良く会話のテンポもスムーズ。これならいけそうだ。バーゲンを見たいということなので、仲良く手をつないでウインドウショッピングを楽しむ。傍から見れば恋人同士の二人だ。
「そろそろお腹空いてない?」時刻はすでに午後六時。
「うん。空いた〜なんか食べたい」
「じゃあお鮨でも食べにいこうか」昨日のしゃぶしゃぶに続いて今日は鮨!。うまく行ってるときくらい経費使ってもいいよね。なんて言う勝手な理論を行使して贅沢三昧のベアー。これで逃げられたらシャレにならんぞ…。という推測は、こういうときに限ってよく当たる。
鮨を食い終わった由美子は。
「そろそろ門限の時間だから」と、言い残しとっととバスで帰ってしまった。茫然とバス停に立ち尽くすオレ。ショックだな〜。しかもオレの手元にはしっかりと鮨屋の領収書が…。ま、まだ八時前じゃないか。気を取り直してナンパを続行する。
パルコの裏手から伸びている並木通りは、この時期であってもクリスマスのようにイルミネーションがキレイだ。周辺にはお洒落な店も多い。思わず立ち止まって見ていると、横道から米倉涼子風の娘が歩いてきた。
「なんでこの時期までイルミネーションがついてるんでしょうね」
「さあ?あたしに聞かれても…」
「もう家に帰っちゃうんですか?」
「ええ」
「もう少し飲みたいと思いませんか?」
「それってナンパですか」
「そうですよ。もちろん」
「この寒いのに大変ですね…」と、やや同情気味につき合ってくれた祥子(二十三歳、OL)パッと見、なかなかいい女である。
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