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 マグロの独白(4)-1
情けない週末

 「写真さえ撮らなければ、何してもいいよ」というOLからの電話。マグロは悩みながらも彼女と会う決心をした。というわけで、今秋最大の恋の予感だ。ところが、いつものように先細りに。今年のクリスマスもまたひとりか!?


 Y子が初めて電話をくれたのは、もう1年も前のことだ。この1年、中年のオレにはさしたる変化はなかったが、彼女は大きく変わった。1年前の彼女はまだ女子大生だった。その後、大学を卒業して就職をしたのだ。思い出したように電話をくれる彼女だが、今年の夏の終わりにくれた電話では

「学生時代からつきあっていた彼と別れちゃったんですよ。マグロさんデートしてくださいよ」

 と言った。うんうん、しようしよう。彼女とは電話で話しているだけで、まだ会ったことはなかったが、きっと可愛い女の子じゃないかという予感はあった。

「でもさ、マグロさんに会ったら、取材されちゃうんでしょ」

「まあ、そりゃ一応こういう仕事してるしさ」

 書かないわけにはいかないかもしれない。彼女は少し考えて

「じゃさ、書いてもいいけど写真とかは撮らないでね」

 と彼女は言う。

「わかった、写真撮らないからさ。会おうよ」

 オレはもはや、仕事とは別に彼女と会いたいという気持ちが自分の中でわき上がってくるのがわかった。

「マグロさんには会いたいんだけど、絶対にカメラとか持ってこないでね」

 ということで、オレたちは新宿で会うことにした。金曜日の夕方だった。改札口を出た交番の前に立っている彼女はすぐにわかった。その場所には何人もの女性がいたが、迷わずオレは彼女に声をかけた。

「えーっ、なんでわかったんですか」

 不思議がる彼女をオレは駅の近くにある居酒屋に連れていった。目の前にいる彼女は小柄でクリッとした目が印象的な女の子であった。そして電話以上によくしゃべる。うれしいことに彼女はオレの本はすべて読んでくれていて、話題はつきることがなかった。オレも楽しくて、普段はほとんど飲まないビールを飲んだ。本の話になり、オレは彼女に

「キミの本棚が見てみたいな」

 と言ってみた。すると彼女は喜んで

「ああ、見に来てくださいよ」

 と言う。気がつけば、彼女の家まで行く私鉄電車に乗っていた。新宿から15分ほど電車に乗り、駅から歩いて10分ほどの住宅街に彼女のマンションはあった。いかにも独身のOLが住んでいるという感じのオートロックのマンションだった。部屋は1LDK。

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