■マグロの独白(10)-4 |
「踊る阿呆に見る阿呆、同じ阿呆なら〜」
というフレーズが僕の中で繰り返された。やはり見ているだけじゃだめだな。自分も参加したいという気持ちがふと目覚めてきたのだ。その思いをさらに強くしたのはウチの小さなバスルームでローションにまみれているのを見たときだ。このプレイはかなり危険らしく、始める前にアリスは何度も神田嬢に注意を与えていた。要するに顔にいきなりローションをかけると呼吸ができなくなるというわけだ。
そんなわけで、まずはお湯を少しずつかけて呼吸を確保しながらゆっくりとローションにまみれるわけである。これが実に気持ちよさそうなのだ。こういうのならやってもいいな。そう思った。そして僕は彼らの帰りがけに
「じゃあ、オレも作ろうかな。ゼンタイを」
とアリスに言った。僕がゼンタイを作ろうと決意したもうひとつの理由は、神田嬢が月に1回開催している「つばきルーム」というパーティで今度ゼンタイをやるからだ。このパーティは神田嬢の女友達を中心にしたフェティシュなパーティである。
「もし、自分のゼンタイを作ったら参加していい?」
神田嬢に聞いてみた。すると彼女はOKをしてくれたので、僕は決意をしたのだ。後日、僕は頭の周り、スリーサイズなどを測り、アリスにその数値をメールで送った。
そして、5月に入って「つばきルーム」が開催された。そこで、僕はアリスから出来上がったゼンタイを受け取った。2万5千円なり。そこには、アリスとその弟子のジョビンという2人の男性。それから、神田嬢とそのお友達の女性が2名。とにかく全員でゼンタイを着用した。初めてゼンタイを着た感想は、とにかく息苦しい。それから視界が狭い。予測していたより体への圧迫感はない。
しかし、これでは写真が取れない。本当はいけないのだが、僕は途中から頭の部分を取って撮影に専念した。最初はツイスターゲーム。おお懐かしい。さらにいろいろな遊びをしたのだが、結局は男子と女子が重なり合っている。僕はその中には入れない。せっかくゼンタイを作ったのに、やはり僕はみんなと溶け込むのが下手なのかもしれない。とにかく写真だけを撮って、ゼンタイを脱いだ。脱ぐとくしゃくしゃとした布地である。僕は帰路につきながらものすごい孤独感に襲われた。狭い世界なのかもしれないが、ゼンタイを楽しむことができる才能がないのだ。
* ちなみにこのビデオはインディーズというわけで、手に入れる方法は通販しかない。問い合わせは「F&M」 電話03-3368-1819。