■マグロの独白(10)-3 |
僕の仕事場は2DKで和室と洋室の2つがある。ゼンタイの2人は畳の上で絡み合っていた。僕はちょっと飽きて、パソコンに向かって原稿を書いていた。すると神田嬢の声が聞こえた。
「マグロさ〜ん、出ちゃったよ」
なんのことだかわからなかったが、僕はカメラをかかえて和室に行った。すると全身タイツ姿でうなだれているアリスと顔の部分を出してニコニコしている神田嬢を見た。
「私ね、アリスさんの精液飲んじゃった」
と神田嬢。えっ、飲んじゃったって? ゼンタイで?
「そう、布越しに吸っちゃったの」
と言う。ゼンタイの生地というのはレオタードの素材のようなもので、水などは通すのである。だから水を飲んだりタバコを吸うことができるのだ。しかし、精液を飲むなんて、ゼンタイプレイのなかではよくあることなのだろうか。しばらく呆然としていたアリスがこの疑問に答えてくれた。
「これはゼンタイの世界では画期的なことですよ。僕が知る限り、初めてですよ」
そうか、僕は歴史的な一コマを目撃こそできなかったが立ち会うことができたんだ。しかし、なんて一般性のない歴史だろう。ものすごく狭い世界じゃないか。ところが、このとき神田嬢が毅然と放った言葉にさらに驚かされた。
「私も自分のゼンタイ作ります」
そう、全身タイツは体にピッタリとフィットするものだから、基本的にはオーダーメードなどだ。それにしても初体験にしてすぐにゼンタイを作ることを決意する神田嬢のパワーにも驚かされた。
そして僕もゼンタイをオーダーメードした
電話があった。神田つばきからだ。
「私の全身タイツ出来上がったらしいんだけど、マグロさんの事務所で受け渡ししていいかしら」
と言う。神田嬢の全身タイツはアリスによって専門のお店に注文されたらしい。電話を切ったら、今度はアリスから同じ旨の電話があった。そこで、僕はあるリクエストをした。それはゼンタイプレイではかなり有名なローションプレイを見せてほしいということであった。アリスは快諾してくれた。
それが4月のこと。出来上がった神田嬢のゼンタイはなんと真っ赤であった。まさに情熱の色。神田嬢がアリスから受け取って腕を通す。というか、体を詰め込むというかんじである。そして、2人はひとしきり和室で抱き合ってい始めたのだ。