■マグロの独白(13)-3 |
続々と個人プロデュースのビデオが登場
今から数年前のこと、インターネットではフェチのカミングアウトが続いた。このWAMのジャンルでもそうだったし、他にも様々なフェチがあった。たとえば、女性に踏みつけられるのが好きだとか、風船とたわむれる女性の姿が大好きだというようなものだ。おもしろいのがそうしてホームページを作った人の何人かは今ではビデオを撮影していることである。たぶん、いまはそういう時代なのだろう。ビデオカメラとパソコンがあれば、ビデオは簡単に制作できると書いたが、モデル探しもインターネットでできる。同時にお客さんもネット内にいるわけだ。そういう意味ではインターネットがこれほど普及したことが、個人ビデオの監督が増えたことと無関係ではないだろう。
そういえば、このところ知り合いの南氏も個人でビデオを撮り、それを売り出したと言う。この南氏というのも面白い人で、今から6年前、一流企業を脱サラした男だ。仕事は、インターネットでいわゆる大人のオモチャを売ることである。インターネットの中に「パンドラ」というお店を開いた。この商売はそこそこ成功した。彼自身も少し変わった性癖を持つ人で、女装姿でクラブイベントに現れる男であった。また、そんなクラブでモデルのくすぐったり、衣服を切り裂くというパフォーマンスも行っていた。
そんな彼が切り裂きフェチのビデオを発売するので、ホームページに推薦文を書いてくれと言われて、ビデオを見せてもらった。フェチビデオには珍しく、なぜ服を切るのかという理由が描かれている。コンビニで万引きをするシーンだ。コンビニの人には「万引き防止ビデオを作っているので」と言ったらしい。個人ビデオなのに力が入っているねぇ。それから、ラビホテルに女性を連れ込んだ悪漢が延々と服を切り裂いていく。このあたりからは、なるほどフェチビデオだとわかるのは、とにかくねちっこく服を切り裂いていく。フェチビデオの特徴はとくかくそのシーンをじっくりと見せるところにある。最後に大きなオチもあって実に楽しい。
で、実はこのビデオは南氏の名前で撮っているわけではない。北条鼎というキャラクターでビデオ制作をしているのである。実は、南という名前だって本名ではない。こうしていくつものキャラクターを作っていくのもヴァーチャルな空間であるインターネット社会ならではないだろうか。もちろん大人のオモチャを売っている「パンドラ」とは別のホームページを立ち上げている。そこの掲示板をのぞいて見ると、やはりマニアの方々の書き込みがずいぶんある。今度はこういう制服を切ってくれだとか、切る道具はカッターナイフではなくサバイバルナイフがいいだとか、さすがにマニアは細かい。しかし、こういうマニアの人たちがビデオを購入するお客さんになっているのである。