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 第4回 タイで生きるいろんな「性」のカタチ(7)

「僕が自分はゲイなんだって自覚するようになったのはハタチぐらいのときかな? その前からタイにはちょこちょこ旅行で来ていてゲイ云々を別にしてタイにはハマっていたんです。
 日本人の場合は常識やモラルなんかがあって、自分のことをゲイだと認めるまですごく葛藤するんです。僕も『男の子に興味はあるのは気のせいだ』って言い聞かせて、無理に女の子とつきあったこともありました。でも、なんか違うなーって感じてて・・・・・・。
 タイの場合、ゲイを隠さないでいい環境っていうのがベースにありますよね。一時期、ゲイのほうがかっこいいみたいな風潮があったらしいんです。歴史をふりかえってもアーティストっていうのはゲイのほうが多いですよね。そういうこともあって、ファッション感覚でゲイを楽しんでいるタイ人はいると思いますよ。日本だったらファッション感覚なんて言ってられないですけれども。
 カミングアウトですか? 友人は知っていますけど家族には言っていません。でも親は成長過程で気づいているような気がするんですよ。性格、身振り手振りなんかで。親の立場になって考えると衝撃的だと思うんで、言わないほうがいいのかなって思います。日本人の場合はだいたいの人が言ってないですよね。でも悩んでいるゲイは多いですよ。『早く結婚しろ、家を継げ』とか言われたりしてね。
 うん、やっぱりタイはゲイの人にとって居心地がいいところだと思いますよ。最初から自分を出せる環境ができあがっているから。それだけ日本っていうのは閉鎖的ですからね。ただ僕も住むようになってからは文化的な面で階級とかの問題で面倒だなって感じることはあるけれど、旅行で来るぶんにはゲイの人にとってバンコクはパラダイスなんじゃないかな。
 タイ以外でここまで派手にやっている国っていうのはないんですよ。ゴーゴーボーイもほかでは見かけない。よく新宿2丁目が世界一のゲイタウンって言われてるけど、外国人に対して閉鎖的だし平日はしけている。でもバンコクは平日でもゲイに関わらず観光客があふれている。世界中のゲイの間で、ここはゲイ・フレンドリーな場所だって有名ですしね。それに日本人を含めたアジア人、欧米人から見ても、タイ人の男の子って魅力的なルックスだっていうのも大きいと思います。プラス、物価の安さも魅力だと思いますね。
 僕は好きですね、この国が」

取材を終えて
 今回インタビューしたのは3人と1組。彼&彼女たちが語ってくれたのはすべてのケースにあてはまるわけではありません。けれど、タイにおける同性愛、トランスを取りまく状況の一例であることは確かです。
 日本と比べればかなり受け入れられているのは事実ですが、タイでも古い世代のなかにはあからさまに嫌う人も存在し、就職などでも平等に扱われているとはいえない状況であることが取材を通してわかりました。
 自分に素直でいること。そのことのリスクを背負ったうえで選んだ彼&彼女たちの生き方に覚悟のようなものを感じ、力をわけてもらった取材でした。

(以上、在タイ日本人向け女性誌「Pomelo」vol.5 に掲載)

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