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  観念絵夢(1)

「おい、コアマガジンから原稿依頼の電話あっただろ。俺が仕事取ってきてやったんだ。俺にゴーストライターやらせろ。俺の最近の活動について書くから。あと、おまえのタイガースビデオのこともちょっとくらい書いといてやるから。」電話から聞こえるいつもの巨泉口調の主は観念絵夢、本名:金子真一郎。
 僕、ささきうずまきが監督したエロビデオ「それ行け!GOGO タイガース」(10/27発売)の出演者でもある彼。このビデオの基本コンセプト『便乗商品』(今年は阪神タイガースの18年ぶりの優勝で世間は大盛り上がり、それに乗っかって多数の便乗商品が出ましたが、これもそのひとつです。)に「便乗した男優」だ。今回、男優にこだわりは無かったので、特に阪神タイガースや野球に興味も無く、関西色も全く無い観念絵夢を男優として起用してみた。観念と初めて会ったのは安達かおる監督作の現場で今年5月。なので特に長く深い付き合いがあるわけでも無い。が、その時に少しばかり話をしたら「俺とお前はMの繋がりがある」みたいな解釈を向こうに勝手にされて、その後ちょくちょくたかりの電話がかかってくるようになった。聞いてると凄く苦しく不幸な人生、生活を送っている人だということだけは理解できた。悲しき人生歩行者、観念絵夢。
 で冒頭のセリフに戻るわけだ。雑誌にタイガースビデオを取り上げさせ、それを通して出演している自分自身を売り込むセコい作戦。
 一週間後、この文章を使えと2千字くらいのくだらない原稿を送りつけてこられた。内容を要約すると、〈第1部 俺とSM〉、〈第2部 俺と大阪ロケ〉の2部構成。第1部は15年以上言ってるお馴染みの『俺SM考』。第2部はタイガースビデオのロケで大阪に行った時のことが書いてあったのだがそれは最初の4行だけ。あとは“俺の大阪漫遊記”みたいになっていた。しかも急に文体がわざとらしく゛でんがな、まんがな調゛になるもんだから恥ずかしくなってしまった。どういうわけか文章の最後は大阪ラーメンの特色について書いて終わっていた。いったい何をしたいのか、何をしているのかさっぱりわからない彼自身の人生のような原稿だった。
 これは無視してこちらで勝手に書くことにした。
 タイガースビデオは都内、大阪で計4日の撮影予定で、可哀想な人生を送る観念を救済する為、彼には4日とも出てもらうことにした。
 ギャラは合計12万円也。
 出演依頼の連絡をすると、恒例の「出てやる」という言葉。これはいつ聞いてもムカッとするが可哀想な人なんだと思うと不思議と許せてしまうのであった。

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