■『池袋北口』(1) |
初めてお気に入りの風俗嬢ができたのもこの「Y」だったっけ。Mさんといって当時の僕よりも少し年上だったけれど、スレンダーでとてもキレイな人だった。
徹夜明けの時など、僕のアパートにはお風呂が無かったため、早朝銭湯の代わりに「Y」に行って、頭まで洗ったりしていた。貧乏のくせに何たる贅沢。考えてみればその料金分を家賃に回せば風呂付のアパートに住めるのに。
もう15年も前の話である。しかし「Y」は今も変わらずに池袋駅北口の線路脇で営業している。その前はしょっちゅう通っているのだが、遊びに行くのはずいぶんご無沙汰だ。15年ぶりに行ってみよう、と思った。
池袋駅北口から大塚方面へ線路沿いを歩くと、ソープランドが立ち並ぶちょっとしたソープ街がある。「Y」「M」はそのままだが、角にあった高級店(池袋にしては、だが)の「アラビアンナイト」はヘルスになってしまった。昔、思い切ってあそこに入ってみて、これなら「Y」の方がずっといいと思ったこと、あったっけ。
看板の文字のデザインが少々変わったような気がするが、店構えは15年前と変わらない。「入浴料5000円」と書かれているが、はて、15年前は7千円くらいじゃなかっただろうか? 値下げしたのだろうか。
もいるだろうが、編集プロダクションというのは出版界の底辺というかタコ部屋というか、とにかく安い給料でコキ使われるところなのだ。僕が最初に風俗にハマったのは編集プロダクションで働いていた頃だ。ご存知の方
僕も週に2〜3回は徹夜が当たり前という生活をしていた。金もない、ヒマもないという状況なので、彼女なんて作れる余裕はなかった。しかし性欲は有り余る、というわけで、風俗に通うようになってしまった。安月給なのに、どうしてそんなお金があるのかといえば、使うヒマすらなかったからなのだ。それに当時は風呂なしトイレ共同で2万円という超ボロアパートに住んでいたから、十万ちょっとという給料でも、結構余ることがあったのだ。
一番よく行ったのが池袋北口のソープ「Y」だった。有名なKチェーンの店で、確か割引券を使うと入浴料がタダになり総額2万円ちょっとで遊べた。隣にもう同じKチェーンで、もう少し安い「M」という店もあるのだが、なぜか僕は「Y」の方に通っていた。