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 合法ドラッグレポ 02(4)

しばらく彼女と微笑みを交わし、再びモニターへと視線を移す。モニターには、前述のヌーディーな画像が映し出されており、こちらの思惑通りに圧倒的な質感を持って網膜に飛び込んでくる。何というか、2Dの世界を完全に通り越してふれていなくても映し出されている女性の重さや肌のきめ細かさなんかが分かるのだ。時折、ゆっくりとその手を挙げてこちらを手招きしたり、足を組み替えてより挑発的なポーズをとったりする。「おっ!!」と思って、凝視すると再びもとの姿に戻る。そんな事が繰り返されて、現実感が次第に希薄になっていく。

 意識は、割とクリアでまわりの状況なんかもよく分かっているし、自分がブツの影響下にある事もよく分かっている。ただ、現実感だけがベロリと剥がれ落ちていて、目に映っているものが全然不思議な光景でなくまったく普通にリアルなものとして認識されているのだ。

 体にも変化の兆しが現れてきた。全身の皮膚、特に一方から吹き込んでくる風の流れを感じている腕や足が敏感になっており、外気の流れがそのまま刺激となって何とも云えない心地よい「ザワザワ感」が露出している肌の部分を中心に広がっていく。より心地よいザワザワ感を全身で味わう為に、裸になる事にした。服を脱ぐ時でも肌と衣類がこすれ、丁寧に献身的にゆっくりと愛撫を与え続けてくれる娼婦が隣にいるような感覚に背筋が寒くなるような刺激を味わう。しばし、素っ裸のまま、窓からゆるりと入ってくる風の流れを全身で感じつつうっとりとする。空気の流れがこれだけ気持ちいいんだから…「そうだ!もう一度シャワーを浴びてみよう!!」という事で、のそりと起きあがり風呂場に向かい、夏休みの自由研究テーマにしたら最高と思われる実験に取りかかる。

 いやー、頭からかぶる水の流れの刺激よりも、シャワーカーテンを伝っていく水滴の軌道の方がはるかにおもしろかった。今や、ドラッグと何の関係もない所でも見受けられる例のサイケデリック柄。赤や紫、黄色や青など様々な色が渦巻くようにして作る例の模様が、刻々と変化する水滴の流れに思いっきりはまって、シャワーに打たれたまま目の前で咲いては散っていく花模様に見とれてしまった。チープなシャワーカーテンが一気に銀幕に変身し、そこに映し出される色とりどりの花火は完全に自分だけの為に打ち上げられ続けている。とにかくこの素晴らしき光景を誰かに伝えたくて、うずうずしてしまった。当然、ラリってる時の電話は後々やっかいな事態に発展しかねないので、ほぼ完全に消滅しつつある自制心をかき集めて我慢する。

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