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「えっ、そんなやり方するんですか??」
「いや、あくまでエロ本の中での話だから、実際にそんな事する奴いねぇーだろうけどさ。それに、あんなに先が細いのじゃ気持ちよく無いんじゃないの??これだったらしっかりとエラも張ってるし、太いし、そして長い。もし、俺が女だったらチャンスがあれば絶対に試してみたいと思うような逸品だけどなぁ。」
「・・・。」
次々と繰り出されるエロ話にどう対応して良いか分からないような表情を浮かべながら、時計をチラチラと確認している女。うまくいけばおもしろい事になりそうだなぁと期待する一方、明らかに会話の内容にうまく絡んでこないといった失望感が混じっていった。
「そろそろ時間じゃない?? 友達と会うんでしょ?? もし気が変わって、あぁビッグディックでオナりたいって気分になったら電話してきてよ。携帯教えるから。」
という事で、携帯電話の番号を教えて彼女を帰した。
最終的に何をするわけでもなく、話だけに終始したに止まったが、実際に「女が訪ねてくる」という事実を手にしたのは大きかった。すっかり気を良くして、「さぁ、次はどんなのがやってくるかなぁ・・・。」と意気込んで次なる獲物が来るのを待ちかまえる事となった。
が、しかし・・・その後、さらに2時間ほど待ってみたが、ふたたび部屋を訪れる獲物は無かった。しかもだ、夕刻に近づくにつれて来店する男の数が増えたようで、それぞれの部屋へ案内される音のみが廊下に響くようになってきた。トイレに立ったり、読みたくもない体験記を取りに行ったりを繰り返しながら、店内の様子を観察してみるが全くと言っていいほど、女の気配が感じられない。当然、どこかの部屋に入っているのであれば、気配もへったくれも無いのだが、少なくとも笑い声やうめき声、よがり声、奇声等何らかの異性が発する音が聞こえてくるはずだ。しかし、各部屋から小さく漂うようにして耳に届く音と言えばプロ野球中継の音のみ。巨人対阪神の伝統の一戦。しかも、18年ぶりとなるリーグ優勝に向けて快進撃を続けている時だったので、解説する側もかなり熱の入ったトーンで中継をしているようだ。
様々な方面から聞こえてる野球中継の音が耳鳴りのように頭の奥底で低く鳴り、それと共に先ほどまでのテンションが急速に落ち込んでいくのを感じた。たとえ、今この店にあらたな獲物が現れたとしても、この競争率では「扉を叩いてもらえる」という栄光をつかむのはかなり厳しい。こうなるともう、売れない立ちんぼのように、ひたすら他の同業者が客をゲットするのをイライラ度150%で見ているしかないような状況になりかねない。何より、ここに4時間いて1人しか部屋を訪ねてこなかったという事実にものすごい腹が立ってきた。ある意味、これだったら若干のサクラを用意してくれた方がまだましだった。お客に少しでも充実した時間を過ごしてもらおうという配慮が全く感じられず、結局4時間もの長きにわたり豚小屋のような所に閉じこめられ、話が出来たのは会ったあとに1時間ほどで顔さえも忘れてしまうような地味な女とのどうでもいい会話のみ。これは無いよな。正直。
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