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  ナンパ地獄変(1)-5
 「すいません…」この後につづく内容はほとんど昨日と同じである。こいつはなんとしても誘いたい上玉だ。
「う〜ん、あんまり時間ないんですよ」そこをなんとか…と拝み倒しお茶だけはOKしてもらった。彼女の名は紀子、なんでも夕方からバイトの面接があるそうだ。そういう理由なら仕方がない。とりあえず携帯電話の番号を交換して別れた。
 やはり福岡は美女であってもあまりツンケンした態度を取る娘はいないようだ。しかもこの調子ならわざわざブスに声を掛けなくとも大丈夫。もうオレは徹底的にイイ女狙い照準を合わせた。
 その後何人かに声を掛けるがなかなか話に乗ってくれそうな娘はいなかった。時計の針が午後三時を回った頃、ソラリアプラザ内のエントランスをゆっくりとした速度で歩く一人の娘(といっても二十代中頃か)に目が釘付けになった。なんというか、他の女には無いオーラを発しているのである。ちょっと声を掛けるのを躊躇したが、博多に来てからのオレは絶好調である。否、失敗を恐れる理由などありはしないのだ…。
「すいません…あの〜自分東京から来たんですが」東京。と聞いて彼女の右眉がぴくりとあがったことをオレは見逃さなかった。やや人工的な面相ではあるが、まちがいなく美人と言って差し支えない様相は葉月里緒菜か山咲千里といった感じだ。
「なんかおもしろそうですね…」
「よかったらお茶でもしながら話しましょう」と言うわけで喫茶店へ。彼女の名は泉、二十四歳、OL(今日は代休らしい)。まっ年齢は公称なので実際はもっと行ってるような気もするが…。小さな顔、端正な顔立ち、細い骨格、どれを取っても文句のつけようがない美人。しかし喫茶店で向き合いアイスコーヒーを注文した後、彼女の口から出た発言はさらにオレを驚愕させた…。
「あたし、実は東京でタレントしてたんですよ…」
「まさか!」いや、この『まさか』は泉を疑って出た言葉ではない。この狭い日本だ、元タレントなどという職種に当たるということもあるだろう…。しかしである。この遠い九州の地で偶然ナンパした女が元タレントとは…。オレはこの幸運を複雑な感慨を込めて受け止めた。その自分自身に向けての『まさか』である。

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