■ ナンパ地獄変(3)-4 |
そろそろ日も傾きかけた午後五時。オレとしてもこの辺でなんとかしたい時刻ではある。そんなとき、ふとオレの横を通りすぎる娘が一人、しかも歩調がやけに遅い…。
「すいませ〜ん」長年の勘から言ってこういう娘は落ちるハズである。ELTの持田香織似のサチコは春物を買った帰りのようだ。
「まあ…ヒマだったんで…」という理由から二人して喫茶店でストロベリーパフェを食す。しかしこのサチコも意外とガードは堅かった。とりあえず携帯の番号だけ聞いて別れる。
おいおい。どうもまずい展開だぞ。浦和に引き続いて大宮も雲行きが怪しくなってきた。時刻もすでに七時過ぎ、こんなときはもうテレクラしかない。実に安易な発想と思うなかれ、こちらとしても必死なのだ。
早速オレは東口の歓楽街にあるテレクラへとやってきた。コールを待つこと三十五分、やっと一本目…ホッ。
「もしもし…今大宮駅なんだけど…」どうやら公衆コールらしい。
「あっそうなんだ」
「援助で…四万欲しいんだけど…」来た来た。しかも四万円とは大きく出たな。しかし、いったいどんな女なのか見てみたい気もする。オレはとりあえずOKの返事をして、彼女の待つ大宮駅構内へと向かった。五分後、相手の指定した公衆電話付近
をウロウロしていると、コギャル風のコートに身を包んだ女がこちらに向かって歩いてくる…しかも二人。
「ねえ、もしかして電話の人?」そう話しかけてきた彼女の顔を見てオレは愕然とした。完全にシンナー中毒と思しきトロンとした目、ドロドロに溶けた汚い歯、ニキビと化粧でガサガサの肌…。
「いっいや…違いますよ…」オレはしらばっくれて、速効でその場を立ち去った。
なんて危険な街なんだ。しかもあんな女で四万も取ろうなんて…。まあ二人組だったから3Pでもやろうというコトなのだろうが…それにしても、あんな女野放しにしておくんじゃねえよ、埼玉県警!駅前の交番は何の役にも立ってねえじゃねえか。と、やり場のない怒りを胸に収め、ふたたび侘しいテレクラの個室へと舞い戻る。
その後サービス時間も含め、一本のアタリも無し。さらにオールナイトコース(朝五時まで六千三百円)に突入したが…なんと午前四時三十分まで個室にいて、まったくいいコールが無かった。
最悪…。一泊一万二千円のホテルも完全に台無し。反省の意味も込めて夜は『松屋』の牛丼(並)を何もチョイスせずに食べた。
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