■ ナンパ地獄変(3)-5 |
いかん。実にいかん展開だ。日が悪いなどと言い訳してもしょうがない。最後の川口に賭けよう。もし川口でダメだったら埼玉はアカンという結論を下してもしかたないが、まだ最後の綱が残っている以上、望みは捨てたらアカンのだ。
しかし川口という街はホントに東京から近い、川を越えてすぐだもの…。今回はホテルを予約したりせず、厳しい状況に自分を追い込んで勝負することにした。川口は街の雰囲気が浦和や大宮とは明らかに違う。なんというか、ダークな感じが漂っている。まあ、ピンサロにも西川口流などという表現がまかり通ってるし、実際そんな街なんだろう。
そしていきなり声をかけたのがガングロのコギャル風である。しかし…なんとこのおネエさん年齢が三十歳だというじゃありませんか。まあ、近くによって顔をよく見れば三十に見えなくもないが、格好はどう見ても二十歳そこそこだろう。しかも職業が新宿のヘルス嬢だということ。で、お店では二十四歳と偽ってるらしいからこの格好も納得。
声をかけた女が一発目から風俗嬢。なんだかいきなり川口という街を象徴する展開である。いや、毒を食うなら皿まで…。どうせなら隣駅である西川口まで足を伸ばして見よう。もしかするとそっちの方が面白いかもしれない。当然ながら西川口の方がさらにダークである。駅前にキャバクラの呼び込みはいるわ、徒歩一分で本サロ地帯だわ…。実際、こんなところでナンパできるのか?と自分に自答してみるが、開き直ればやってやれないこともないのだ。オレは早速駅周辺で声をかけまくった。すると十分もしないうちに東京のとある短大に通うという典子が引っ掛かったのである。
「こんなとこでナンパしてるんですか?」実に不審気な顔でオレを見る典子。
「何言ってるんだよ…。今『埼玉が熱い』っていうからわざわざ東京から出てきたんじゃない」オレのくだらないジョークについてくる典子。かくして二人は近くの居酒屋へしけ込むことと相成った。
典子の実家は神奈川だが、短大に通うために西川口で一人暮らしをしているらしい。
「西川口って、一人で住むにはちょっと、アレじゃないか?」聞きようによっては大変失礼な質問なのだが…。
「う〜ん。まあ家賃が安いから環境は我慢するしかないかな…」ということらしい。
この後、すっかり意気投合した二人がホテルへ行くまでそう長い時間はかからなかった。
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