■ ナンパ地獄変(5)-3 |
「そうですね」うまく行き過ぎているような気がしないでもないが、うまく行く時はそういうもんだ。うんうん。その後オレとユキは二時間ほど談笑。きわどい会話にも平然とついてくるユキはもう完全に貰ったも同然だ。神戸初日から大金星。レジで会計を済ませ、
「じゃあ、オレの泊まってるホテルに行く?」との問いかけに、もちろんユキは黙って頷くだけ、エレベーターに乗っているときも二人の手は絡まったままであった。しかし…。 店からオレの宿泊しているホテルまでは徒歩三分。普通ならまったく問題のない距離だ。トアロードの坂を上りかけた瞬間ユキの携帯から不穏な着信音(宇多田ヒカルのファーストラブ)が流れた。
「あっごめん…ちょっと待って」
まさか…。オレは自分の中で不安感が一杯になるのを必死で打ち消した。まさか、そんなことは。
「うん…じゃあ、わかった」ローソンの前で立ち止まること約五分。何やら深刻な会話が。終わったようだ、そして…。
「あの…ごめんなさい。今日元カレが家の前で待ってるって…」
「!!」
「だから、すぐに行かないと。本当にごめんなさい」
うっ、嘘だと言ってよジョー。オレは前回の京都に引き続き土壇場で大逆転劇を食らったのだ。
「ええ、いっ今すぐじゃなきゃ、ダメなの?」ホテルはもうすぐそこなのに…。ううっ。
「ごめんね、もう行くから」そう言い残すとユキは足早に去っていった。あぁ、なんてこったい。時刻は八時半を回っていたが、この後オレはヤケクソ気味になって手当り次第に声を掛けまくった…。もうメチャクチャ。
十一時過ぎにホテルに戻ったオレは、やっぱりテレクラに行けばよかったかも?という自問を胸に布団をかぶってとっとと寝た。(オナニー一回)
さて、二日目。昨晩のこともあり非常に夢見の悪い朝であった。しかしそんなことをいつまでも引きずっていても仕方ない。南京楼で少し遅い朝食を取り、本日は高架下を中心に探索を開始した。元町は高架下が一大ショッピングモールとなっているのが特徴的だ。古着屋などを中心に意外とシャレたお店も多く、昼間から若者で賑わっている。
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