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  ナンパ地獄変(12)-2
「すいません。初めてなんすけど…」フロントは黒ブチ眼鏡をかけた愛想のいい小太りの男が一人で店番をしている。
「はいはい…えっと、初めての人は一時間サービスで三時間三千円ね」馬鹿に安いが、地方都市ならこんなもんか。
「電話の鳴りはどうすかね」財布を出しながらなにげに聞いてみる。
「全然!ダメ」
「ええ?」
「鳴ってないね…」
「まっマジっすか」財布から千円札を出す手が止まる。
「う〜ん、正直なとこ今はやめといた方がいいよ。悪いこと言わないから」店員にそこまで言われて強引に入店するほど度胸の座ってないオレである。
「じゃあまた時間をずらして来ます」と、そそくさと店を後にした。
 もう一度アーケード街を通り抜け、そごう(まだ閉店してない)のある方面へと歩く。ふと横断歩道付近で金髪の娘を発見。目の焦点もどこにあってるのかわからないボ〜っとした感じだ。迷わず声をかけると一応拒否する姿勢は見せない。OK…なのか。
 リカ(二十歳、無職)オセロの片割れに似。だ。とりあえずそごうの八階でチョコパフェを奢る。
「ヒマだったの…」
「うん」
「なにやってたの?」
「べつに…」むっ難しいな、こういう何を考えてるんだかわかんないタイプは。それにしてもチョコパフェだけは美味そうに食うヤツだ。こういう挙動不審な娘は深追いすると墓穴を掘ることになりそうだし、適当にバイバイしよう。
 どうもいかんな。その後二、三人に声をかけるがこれといった当たりはナシ。仕方なく一旦ホテルへ戻ろうとしたその矢先、ゴマキ似のアヤ(二十歳、専門学校生)とバッタリ。オレが東京から来たことを告げると、ナンパにのってきた。こうでなくっちゃ。
 オレとアヤは出会ってからわずか十分でホテルの一室にいた。
「やだ〜、まさか東京からナンパしにきてるの?」
「あのね…んなわけないでしょ」
「じゃあ何しにきたの?」
「ん…いや…ナンパ…」
「キャハハハマジで〜」というわけですっかりと打ち解けてしまったオレとアヤ。そんな二人が肉体を貪りあうまでにはそう時間はかからなかった。夕方過ぎまで部屋にいたアヤとは結局夕ご飯も共にすることとなり、本通り沿いにあるしゃぶしゃぶ店で今度は牛肉を堪能。これで寒さと疲れも吹っ飛ぶというものだ。

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