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ウラ宿系、面会に行く Part2
な、なんと、私の長年の部下である丹ちゃんが逮捕されてしまった。酒に酔ってラブホテルで大立ち回りを演じ、駆けつけた警察官を蹴っ飛ばしてしまったのだ。彼がなぜそんな無謀な行為に及んだのか、事件の経緯を綿密にルポルタージュしてみよう。──とはいっても、単なるおふざけ話が高じて起こってしまった悲劇だが…。「晴天の霹靂」といえるこの事件に、現在の警察と司法の在り方を垣間見た。読者の皆様にもいつ降りかかってくるかもわかりませんよ。嗚呼、可哀想な丹ちゃん…。
女は男の理性を狂わせる!?
彼もまた典型的なウラ宿系の匂いをかもし出している男だ。薄い頭髪に恰幅の良いぽっちゃり体系。メインコスチュームがジャージというファッションセンスは一見、本職のような威圧感をかもし出している。しかし、どことなく憎めない風体とそのキャラから、ホステスの間ではちょっとした癒し系アイドルとして、歌舞伎町界隈では大の人気者だ。丹ちゃんとは私が個室ヌードを経営していた頃からの付き合いで我がKグループの最古参である。知り合ってからもうかれこれ20年以上になるだろうか。
【ちなみに個室ヌードというのは80年初頭にブレイクした風俗で、その名の通り、個室で女のコが洋服を一枚一枚脱いでいく「タケノコはぎ」の原点のようなもの。ポラロイド写真一枚を数万円で売りつけ、それ以上の金を払ってはじめて手コキをしてくれるというひどいお店…。そんなぼったくり営業でも当時は連日連夜、客が詰めかけていた。実際、個室ヌードでは結構な額を稼がせてもらったものだ】
ある晩、いつものように部下や知人を集めて宴会を開いていたときのこと。この日は全員がかなりの勢いで飲んでいたが、丹ちゃんだけは早々と酔っぱらってしまっていた。なぜなら彼の横には高級クラブ『S』のナンバーワンホステス、綾乃嬢が座っていたからだ。丹ちゃんは春先から彼女に稼ぎのすべてを貢いでいた。美人でスタイルも良く、妖しげな雰囲気を持つ魔性の女に、遊び馴れた丹ちゃんもすっかり牙を抜かれトリコになってしまっていたというワケだ。その女が隣に座りお酌をしてくれる。あわれ丹ちゃんは酔っぱらってフニャけた表情をさらに歪ませて、スケベ丸出しな表情でハイピッチで酒をあおっていた。
「丹ちゃん、大丈夫〜?」
「大丈夫ッス。じ、自分は若い頃からエーちゃん(矢沢永吉)に似てるって言われてんです。な、ウソじゃないよな? S! K! 本当だって言えよ!」
と綾乃嬢の前だと必要以上に後輩に威張り散らす丹ちゃん。本当にわかりやすい男だ。日頃から丹ちゃんのことをからかって遊んでいる私のイタズラ心に火がついた。
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