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「つまりさ、ジャンケンで勝った方が縛って、負けた方が縛られるというようにさ、偶然性によってSやMの立場が決まる方がドキドキしない?」
彼女の目が輝いた。
「そうなのよ。私、もともとSMが好きでこの仕事を始めたんだけど、なんかワンパターンでSM嫌いになっちゃいそうなんですよ」
「それじゃちょっと新しいSMを模索してみようよ」
こんな感じで僕らは盛り上がり、なにかプレイをしようということになった。
あらかじめ何かを決めておくのもつまらないので、とりあえず会う日だけを決めた。そして、平日の昼下がり、僕らは都内の喫茶店で待ち合わせをしたのだ。
「何も道具を持ってきていないから、買いに行こうか」
ヒトミ女王様はそう言いながら、近くの手芸店へ。そこで僕らはいろいろな色の紐をたくさん買った。
それから僕のホテルに向かう。何も決めていなかった。とにかく僕らは野球拳をして先に彼女が全裸になった。そこで大量に買い込んだひもで。次に負けた方を縛ってみることにした。縛るといってもこれまでSM雑誌に載っているようなきれいな縛り方ではなくただぐるぐる巻きにしてはどうかという彼女の提案で実行に移したのだ。とても楽しかった。SMとはこうでなくてはいけないというものを全く無視してあれこれ遊んでみた。僕も縛られたけれど、雰囲気は和気あいあいとしていた。さらに今度は2人一度に縛られたらどんな感じなんだろうか。やってみることにした。何かあってはいけないからとテーブルの上にはさみを置いて裸で抱き合ったところで縛り始めた。さっきも言ったようにきちんと縛るのではなくぐるぐる巻きだからすぐ簡単に縛ることができた。ところが、本当にガチガチに縛ってしまったのでお互い立ったまま動くことができなくなってしまった。もしものためにはさみを置いたテーブルもこういう状態でははるかかなたにある感じである。とにかく歩くことができない。僕らは縛られたまま少しずつ移動した。手前に電話機がある。もしこれにあたって受話器が外れたらフロントから人が飛んでくるだろう。こんな状態を見られてしまうのはなんとも情けない。慎重にしかも倒れないように僕らは少しずつ移動した。ほんの3メートルぐらいの間を30分ぐらいかけて移動したように思う。ハサミのところまで来てもこれを手にとって切るまでがこれまた時間がかかった。
こういう予測できないドラマが生まれるからこそおもしろいのだ。
「いやぁ、面白かったねぇ」
そう言うと、彼女も同意した。そしてさらに
「もっと大人数でやれば、もっとおもしろいんじゃないの」
なるほど。つうわけで、僕はそれを実行に移すことにしたのだ。
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