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 マグロの独白(1)-2
 そんな電話をかけてきた女性の一人が三重県に住む主婦のK子だった。最初はイタズラ電話だったのだが、オレの家の電話はナンバーディスプレイである。すぐに折り返しの電話をした。しかも、パソコンのソフトで検索すれば、名前も瞬時に出てくる。K子は最初、オレから、ズバリとダンナの名前を言われて唖然としていた。

 彼女との電話はこんなふうにスタートした。2人の関係が深まったのは彼女がパソコン通信をやっていたからだろう。何度かのメールのやり取りでK子の年齢は30歳、子供はいないということ、さらに自宅でパソコン関係の仕事をしているなどということがわかった。何度かメールをやり取りするうちに彼女から自分の写真がメールで送られてきた。パソコンで仕事をしている主婦というイメージから、小太りの眼鏡をかけた女を想像していたのだが、それは大間違いだった。どこか鈴木京香に似たしっとりとした美人だった。ひえーっ、こんな美人がオレの読者だったんだ。

 ところが、メール交換をして1ヶ月後、彼女から上京するというメールが届いた。仕事での出張だという。彼女から電話があり、いきなり四谷の自宅に現れた。土産だと言う“赤福もち”を差し出しながら「玄関先で失礼しようと思って…」小声で言った。もう、新幹線の時間があるので、と言って本当に立ち去ろうとする彼女をオレは引き止め、ついチューをしてしまった。とまどったような表情で、彼女は急いで部屋を出ていった。

 住んでいるところも遠いし、もう二度と会えないという気持ちから、ついキスなどをしてしまったが、果たしてこれでよかったんだろうか、と少し反省もしたが、まあよかったんだ、と自分で結論付けた。

 ところが1週間後、再び彼女が東京にやってくると言う。なんでも、彼女の実家は横浜で、身内に不幸があったとかで通夜に来るらしい。

 そして、その当日。彼女の携帯から電話があった。

「日帰りのつもりだったんですが、電車がなくて…、ダンナには実家に泊まるって言っちゃったし」

 と、オレのところにやって来るというのだ。

 いかん、せっかくこれまで禁欲生活を送ってきたのに。これでは今まで我慢してきたものが崩れ去るのではないか。K子さんは人妻だし、結婚の対象者ではない。不倫ではないか。頭にいろんな考えが浮かんだが、それでもK子さんは家まで来てしまった。

 とにかく、話だけにとどめ、エッチはしないようにしようと心に決めた。別々の部屋に布団を敷き、先に風呂に入ってもらうことにした。

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