■マグロの独白(11)-3 |
「それじゃ、こっちの部屋で着替えて」
と早くもオレは彼女に着替えを命じた。オレの仕事場兼住居は2DKである。洋室が仕事場、和室で布団を敷いて寝ている。
「準備できました」
とボディコンを着て出てきたY子は、ちょっと時代錯誤の感覚がある。
「それじゃ、ちゃぶ台の上に乗ってよ」
と言うとY子は唖然とした。
「えーっ、ここで踊るんですかぁ」
そうだ。当たり前だが我が家にはお立ち台はない。しかもBGMさえないのである。最初は抵抗していたY子もしぶしぶちゃぶ台の上に上がって体をくねらせて踊る。オレはカメラを下から向けてあおりで撮影した。扇子を持って無音のままの踊りは少しブキミな感じもした。非日常である。
もちろん写真を撮った後、いろんな人たちの連絡先を教えてあげるなどちゃんとネタは提供した。世の中、ギブアンドテイクだ。
下腹を撮らせてくれた女性週刊誌の記者
電話で取材されることが多い。たいてい週刊誌の記者はそうだ。I美もそんな記者のひとりだった。何のテーマかは忘れたが、電話取材を受け、それから少し雑談をした。
「今、フェチの写真を撮っているんだけれど、自分の体でどこを撮られる恥ずかしい? もちろん乳首とかアソコ以外でだけど」
I美は少し考えて
「うーん、下腹かなぁ。最近出てきちゃったしな」
I美は31歳のバツイチだ。そして子供がひとりいる。
「やっぱり、子供産んで以来戻らないんですよ」
と言う。あ、いいねぇ、それ撮らせてよ、と頼んでみた。最初はいい返事をしなかったI美だが、いかに女性の下腹の出っ張りがセクシーかを力説した。
「マスコミなんかはスリムな女がいいみたいな一元的なものの見方しかしないけれど、男の嗜好ってそれぞれだし、第一その下腹にあなたの人生が凝縮されているわけで、それこそが“美”なんだよ」
とわけのわからないことを言ったのである。こういうときはわけのわからないことを言うに限る。そして、約束の日、I美は知り合いの女性ライターと共にオレの仕事場兼住居を訪れた。1人では危険だと思ったのだろうか。まずは寿司でも取ってビールを飲み、リラックス。もちろん、こうすればI美の下腹はさらに出てくるだろうという俺なりの目論見もあった。
最初はスカートの上から撮っただけだからよくわからない。撮りながら
「うーん、ちょっとよくわかんないな。裸になれとは言わないけれど、スカートちょっと脱いでくれないかな」