野望の帝国 野望の帝国

風俗情報

 『タニヤの女』(4)

 シングルマザーになった彼女はエロ本のモデルをして生活費を稼いだ。それが一年ほど続き、今度はマカオへ40日間出稼ぎに行くことを決める。お風呂屋での泡姫デビューだ。
「40日間で20万バーツ(約60万円)稼いだわ。その間、子供は母親に3万バーツ(約9万円)渡して面倒を見てもらった。それでタイに帰ってきてシンガポールにまた出稼ぎに行くはずだったんだけど、そのころ2番目の夫に出会って、30万バーツとひきかえにシンガポール行きはやめにしたの」。
 2番目の夫は台湾人。じつは本国に妻のある身で、彼女は形式上、愛人。しかしふたりのあいだには子供も産まれ、夫婦同然の生活を送っていた。ところが本妻がバンコクへやってきてDちゃんの存在に気づき、少しづつ精神が崩壊していってしまった。自由に身動きができなくなった夫(?)と彼女は仕方なく別れることになった。いまでもたまに元夫は、彼女と子供たちに会いにきてくれるという。
 不運というか、男運がないというか、ついてない人だなというのが率直な感想。

――また結婚してみたいと思う?
「タイ人はわがままだから結婚したくない。いま結婚するんだったら、ふたりの子供をまず第一に考えて、慎重にコトを進めたいと思ってる。情熱とか一時の気持ちだけでは決めたくないわ」
 ふたりの子供を抱え、彼女はまた風俗業を始めることにする。しかし気づけば自分は30過ぎ。若さが命の業界で自分が通用するのはタニヤしかないと思い、数ヶ月前にやってきた。

――これまでに仕事で相手をしてきた男性の数ってそれぐらいか覚えている?
「何人だろう? 覚えてないわ。もういっぱいだから。2番目の夫と出会ったときはもう子宮内がボロボロで注射をしないと子供ができないって言われたの」
 ふたりの子供を養えるだけのお金さえ貯まれば、いつでもこの仕事を辞めるつもりでいるという。
「でも、それはだいぶ先のことになりそうだけど」
 あなたの夢は? という問いに、
「夢っていうか、子供が成長したら私のことは気にしなくていいからふたりで力を合わせて生きていってもらいたい。そういう強さを身につけてほしいわ。それだけを望んでいる」
 にぎやかにマシンガンのようにしゃべる彼女に苦労のかけらは見あたらない。男性によって狂わされた人生を男性によって修正していく彼女。その華やかな容姿で上手に日本人を騙していってほしい。それはそうとして、女強し、母強し、である。頑張れDちゃん!
(G−ダイアリー 7月号掲載)

 と、無難にまとめた原稿だった。インタビュー時点でタニヤで働き始めて4か月というDちゃんに心からのエールを送ったのは事実だけども、この話には続きがある。
 話をはじめのほうに戻す。愛人としてタニヤのホステスを囲う駐在員や日本人ツーリストがいると書きました。なかにはそれだけで物足りず、ホステスと結婚する中年男性が今も昔も絶えない。タニヤのホステスに限らず、外国人との結婚がこの国では貧困からの脱出法のひとつとなっている。

[前のページへ] [竹野内実花TOPへ] [次のページへ]


Copyright(c) 2003-2004 YABOU NO TEIKOKU All rights reserved.