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 第4回 タイで生きるいろんな「性」のカタチ(5)

「あぁ、これは女性ホルモンを飲んでいるからよ。飲んでいると色も白くなってくるの」

 と、冷静な返事が。しかし副作用として疲れやすくなり、肝臓にも負担がかかり、健康には良くないということだった。
 恋に一途でおっちょこちょいでどこが憎めないお気楽な人たち、というマスコミが勝手につくりあげたカトゥーイキャラを信じて疑わなかったこともあり、この日常生活でカトゥーイという生き方を選択することは、闘いにも似た険しいものだということにエーさんに会って初めて気づかされた。

「4,5歳のときから男の子が好きなんだって感じ始めていたわ。小学校に上がるまで両親の仕事が忙しいこともあっておばあちゃんの家に預けられていたの。そこは男の子ばかりの家族だったのね、それがいまの私に直接関係しているのかは自分ではわからないんだけど。両親は仕草やお人形さん遊びを好む私を見てもしやって感づいていたらしいの。母親はそんなにシリアスに考えてなかったんだけど、父はすごく心配してた。サッカーとかを勧めて普通の男の子にさせようとしていたけれど私はそれを受けつけることができなかったの」

 そんな両親に対し『告知』という形でカミングアウトはしなかったけれど、徐々に自分がカトゥーイであることをオープンにしていったという。

「中、高校までは校則が厳しかったから制服は男子用。髪も短かったわ。大学にはいって初めてスカートをはいたり髪を伸ばし始めたの」

 最初こそ否定的だった父親もだんだんと理解を示すように。

「女性と同じ格好をするようになって精神的に楽になりました。周りにも自分にももう嘘をつかなくていいからね。けれど両親が『あそこの家の子はカトゥーイなのね』ってうしろ指さされたりしたことに対しては申し訳なく思ってる。でも人間って誰にでも好き嫌いがあるから、カトゥーイが苦手っていう人がいてもしょうがないと思うわ」

 実際、カトゥーイであることを理由に就職の面接で落とされたことも数回。けれど受け入れてくれる人のほうが多いという。

「昔と比べてカトゥーイやゲイの人は増えてきた気がするわ。それはカトゥーイ、ゲイであることを表現してもあまり差別されなくなってきたからだと思う。受け入れる側が増えれば、表現する側も増える。そんな相互関係があるんじゃないかな」

彼氏より母親を大切にしていきたい

 それまで冷静に客観的に意見をくれたエーさんだが、彼女の感情の揺れを感じたのは性転換の話に及んだときだ。

「23歳のときに7万バーツかけて性転換の手術をしたの。それまでは手術の必要性を感じていなかったんだけど、当時付き合っていたイタリア人の彼が一緒にイタリアに行こうって誘ってくれたの。ええ、彼は私のことをカトゥーイとは知らなかったの。好きだったのは事実だけれど海外で暮らせるってことが、私に手術を決めさせたわ。3日間悩みに悩んで一週間後に即手術。いま思うと早すぎる決断だったわね(苦笑)」

 しかしどういうわけかその後、彼とはまったく連絡が取れなくなってしまった。いまでもその理由はわからないという。

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