――風俗をしていたことにうしろめたさはあった?
「うしろめたさとかはなかった、うん。たまに何やってんだろう私はっていうのはあったけど。イメージ? なんだろ・・・・・・、トゥナイトとか見ててこんな世界もあるんだ、すげぇなぁって思ってた。無縁だと思ってたけど気づいたらやってたみたいな」
ヘルスに四か月ほどいて体力に限界を感じた彼女は居酒屋でバイトを始めた。この頃に一人の男と出会った。
普通じゃない彼
七月七日。織り姫とひこ星が年に一度だけ会えるその日に、彼女は彼と上野動物公園でひさしぶりの再会をした。彼女はトラブルメーカーの彼を探しに数か月前、札幌から上京してきたばかりだ。
彼はやくざ。出会いはおよそ一年前。
すでに風俗嬢だった彼女は体力の限界を感じ居酒屋のバイトをしていた。たぶんもう風俗には戻らないだろう、未練もない、そう思っていた矢先、アルマーニのスーツを着こなす羽振りのいい男と知り合った。彼が一筋縄でいかない人物だと知るまでさほど時間はかからなかった。セックスのとき服を脱がないのは刺青があるためでそれはやくざの証明であり、拠点がなくいろんな家を渡り歩いていたのは世話をしてくれる女がたくさんいたからで、よく携帯が鳴っていたのは別れた妻からの電話だった。子供までいた。
アルマーニは関係が深まってくるにつれ何度も彼女に言った。
「もっと金のかかったはずかしくない格好をしろよ」
となるとお金が必要で、手っ取り早く彼女は風俗へ舞い戻ることにした。一度始めてしまえば何度も戻ってしまう世界が風俗だ。
「彼もデリバリーヘルスでスタッフをしていたことがあったから、仕事については何も言われなかった」
しかし喧嘩の毎日。ヘルスで毎日くたくたになって帰ってくると一緒に借りてる部屋に知らない女と彼が仲良く寝ている。
「どこから見つけてくるのか分からないけど毎日連れてくるんですよ」
元不良の彼女はいかりの矛先を彼ではなく女にむける。蹴りを三、四発くれてやった。
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