このあとも何度か家族について質問してみたものの、あまり話したくないという軽い拒否感のようなものを感じた。もちろん彼女みずからこの話題にふれることはなかった。
「今は生活と仕事のことで目先のことしか考えられない。彼とも将来のことはまったく話さない。毎日がいっぱいいっぱいなんです」
そっか、そうだよね。心でそうつぶやくも、年齢よりも疲れすぎた彼女の発言と投げやりな言い方に、しこりを感じずにはいられなかった。
彼女からの手紙
取材後少し経ってから手紙が送られてきた。驚いた。私の知っている彼女はどこか刹那的で、はつらつとしたところのない疲れた表情をした女の子だった。ものすごい誤解を私はしてしまっていたらしい。彼女はまだ二十歳の、人生に一生懸命な女性だった。
「先日はどうもありがとうございました。しかもくだらない私の話を二時間もえんえんと聞いてもらってしまって本当にスミマセンでした。
自分の恋愛や仕事の話を友達以外に話すのは初めてでちょっと恥ずかしかったけど・・・・・・。でも話してちょっとすっきりしました。やっぱり彼のことは好きだし大切な人にはかわりないんだけど、それでも依存しすぎるのはよくないと思うのです。依存しすぎると欲が出て来て、自分の物にしたいとか思ってしまうものです。だから上手く言えないけど、自分が泣かない為にも彼にははまりすぎず・・・・・・と思っています。たしかに長く一緒にいると、情もわくけど、未来を考えると上手くはいかないと思う。どうせなら私は幸せになりたいし後悔したくない。一時的なさみしさと未来を選ぶなら、未来のほうが私には大切です。そう思います。・・・・・・って、でも上手くいかないのが現実ですよね。
それでも私はがんばります。自分の為の人生だからね。
体には充分気をつけてこれからの活躍を期待しています。
それではお元気で。
本当に本当にありがとうございました」
これからあともしばしば手紙は送られてきた。内容は近況報告。かわいい自筆のイラスト入りが多く、どれも素直な気持ちをつづってきた。
「いつかまた会って話しを聞かせてくださいね」
私がそう言っていたこともあり、私たちは八か月後に会うことになった。
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