■第10回 体を売る青年 ―僕の仕事はゴーゴーボーイ―(3) |
タイも日本同様学歴社会である。ただしタイの場合、高校を卒業していれば職探しにはさほど困らない。地方出身のMの実家は裕福とは言えなくても、高校を出ているのだから食うに困るほどの貧乏な家庭ではなさそうだ。セックス産業に足を踏み入れる人は、中卒か小学校さえまともに通っていない人というのがひと昔まえの状況だった。現在は平均的生活水準があがり、低学歴の人も少なくなってきているが、さらなる豊かさを求め、セックス産業に従事する人が多いのは依然変わらないようだ。
友人から持ちかけられた話に乗ったらそこはゲイに体を売る場所。その世界を見てMはどう思ったのだろう?
「いい仕事だとは思えなかったし、とにかく驚いた。それまでゴーゴーボーイなんてまったく知らなかったから。でもお金のためって思った。初めてのお客さんは日本人だったよ。セックスはなしに話だけしてチップを千バーツもらった。いい仕事じゃない、でも、働いてお金をもらったうれしさもあった。それから少し経って初めて男とファックしたよ。相手はファラン(白人)さ」
ゴーゴーボーイの半数はゲイではなくストレートだと言われている。Mもそのうちのひとりだ。
「気持ち良くなんかないよ。イキそうになったらお客さんがイッたあとトイレへ駆け込んでオナニーしている。ファックしているときはとにかく女が恋しい。女の人を思い浮かべている。きれいな女の人をね」
――お客さんはアナタが女が好きなことを知っている?
「とくに自分からは言わないけどバレてるんじゃない? 聞かれたら『男が好き』と答えるようにはしているけど」
――女の人が好きなのに、どうして男性とセックスができるの?
「すべてはお金のためさ」