■第10回 体を売る青年 ―僕の仕事はゴーゴーボーイ―(5) |
高収入のわりに少ない仕送り額。Mはまだしているだけいい。仕送りもせず自分の娯楽に全収入を注ぐボーイもいるのだ。貧困が彼らを性産業へ駆り立てたわけではけしてない。差別・・・、これではされても仕方がないんじゃないの? と私は思ってしまった。。
得た収入を麻薬につぎこみ、中毒で亡くなっていったボーイもいるそうだ。
「僕はクスリは大キライ。HIVで亡くなった人? それは知らないな」
セックスのときは必ずコンドームを装着。三ヶ月に1度はHIVのテストが彼らに義務づけられている。
夢は金持ちになること
バンコクのゴーゴーボーイバーのほとんどが20時から深夜2時までの営業で、1日に2回ほどショータイムがある。一杯のドリンク料が200バーツで、最初にドリンクを頼んでしまえばあとは何時間いても別にとがめられない。こんな楽しみ方をするのはもっぱら好奇心でやってきたストレートの男性や女性で、ショーは二の次で、タイプの男の子を探しにくるゲイのお客さんのほうが多い(と思う)。
ショータイムではタイダンスやファイヤーショー、しだいに過激さを増してきてファッキングショー、でかちんだけを集めたでかちんショーなど、1度は見ても損のない内容になっている。ショーに出ればわずかながら報酬が出るので、これを目当てに出演するボーイもいる。
何度もショーを見てきてこのごろつくづく思う。人前でファッキングや勃起したペニス見せている姿を家族が知ったら泣くんじゃないの? と。いや、ぜったい泣くよな。
Mはショーに出ていないが仕事のことは田舎の家族になんて言ってあるんだろう?
「レストランで働いていると言ってあるよ。ぜったい仕事のことはばれないと思う」
――もし、万が一バレたとしたらどうなると思う?
「辞めさせられると思う」
Mは4人兄弟の末っ子。父親を早くに亡くし、女手ひとつで母親が4人を育てあげた。タイ人はそれでなくても家族思い、親思いと言われているが、Mはその傾向がとくに強いように思う。外国でひとりで暮らす私に「ポーメー・サバイディーマイ?(両親は元気?)」とよく聞いてくる。
――いつまで仕事を続けるの?
「あと1,2年かな」
3年まえのインタビューでも『1,2年』と言っていたの覚えてる? M? そんなんじゃアナタの先が思いやられるよ。
――辞めたらどうするの?
「何か事業を起こしたい」
どういうわけかこれまで話を聞いてきたタイ人のセックスワーカーのほとんどが、『事業を起こしたい』と答える。それが1番安定した道なのだろうか?
このあと「あなたの夢は?」の問いに、『金持ちになること』と答えたM。稼いでいるわりに貯金がまったくないようでは、本当に夢で終わりそうな気がする。