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  テレクラ放浪記(5)-1 Date: 2003-06-11 (Wed) 
これまでのあらすじ
末森ケン「今から11年前のある日、サラリーマンを辞めて、フラリと入ったテレクラで美人人妻と知り合い、その日にセックスした。以後素人女とのセックスにハマり、それらの体験談を雑誌「宝島」などに寄稿しているうちにテレクラライターを職業とするようになる。中でも最初のSMプレイ(テレクラ放浪記 第4回)経験は刺激的で、それまでエロ雑誌で読んだ〈縛り〉とか〈浣腸〉といった表面的なことしか知らなかった俺は〈支配と従属〉という精神的なことが基本であることを教えられた。まだまだありそうだ。俺のテレクラ探検は始まったばかりだ」

 職業としてテレクラ探検人兼フリーライターになったからといって所属事務所があるわけでもなく仕事のノルマもあるわけでもなく、私の生活そのものに変化はなかった。

 朝7時ころ起きて新聞テレビを見ながら食事をして自分の部屋に戻ってタバコを吸ってそれからすることは何もなかった。

 区役所のリサイクルコーナーで手に入れたスチール製の袖机とZライトでワープロ専用デスクを作り、古本屋で買った用語辞典や漢和辞典などと文章読本の類、s社の編集者からもらった原稿用紙を入れてライターの机らしくした。
学生の時から使っていた勉強机の前にフリーマーケットで買った大きな時計と畳半分ほどあるホワイトボードの日程表を取り付けるとライターの個人事務所らしくなった。
いつも母か父のいる居間の電話では、編集者とアヤしい会話ができないので、母に「調子が悪いから」と嘘を言って古い電話機を新型の親子電話に交換して子機を自分の部屋に置いた。
すぐに用件をメモできるように、やはりフリーマーケットで大量に仕入れたザラ紙を半分に切って分厚いメモパッドを作った。仕事場はできた。

 だが、窓を開けると物干し用のベランダ越しにシミのついた前の家の壁が目に入ってやっぱり自宅には変わりなかった。
それをなんとか和らげるために、斜め格子の目隠し板を園芸用品店で買ってベランダの柵に取り付け白く塗ったが、前よりバランスが悪くなってしまった。

 プロのライターの仕事場がどんな感じなのか知るべきもない。
さぞ、都心の高級マンションの一室でシャレたイタリア製の家具と南国の観葉植物に囲まれて、白い大きなデスクには大型のパソコンやファックスが置いてあって、外を見ると遠くに東京タワーなんか見えて、仕事に疲れるとステンレスのエスプレッソメーカーで苦いコーヒーをいれるか、飾り棚からスコッチなんか出してストレートでキュッとやるにきまっている。
そして夜は六本木あたりのカフェで編集者と打ち合わせをした後、スポーツカーを駆ってレースクイーンのガールフレンドと深夜のラブデート。
それを想像すると練馬の古ぼけた戸建ての自宅の2階住まいが情けなかった。

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