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一室に密集した作りとなっているプレイルームからは他の客の懺悔(?)や叫び声に近いあえぎ声、そして女のコの調教台詞が筒抜けだ。これはかなり恥ずかしい。基本的にSMに関してはニュートラルな姿勢である僕としてはここまで突き抜けることはできない。客に聞こえるのならまだいい。でも、冷静な立場である店側のスタッフに聞かれるのは無茶苦茶イヤだ。たいがいの変態的なあえぎ声にはスタッフ側も感覚が麻痺しているということはわかっていても、である。あと、ここまで筒抜けだったら、お店のコの電話番号なんかも聞けやしない。筆談でナンパするしかなさそうである。
「お待たせしました。マサキちゃんです!」
時間は夕方の5時ちょいすぎ。早番であるマサキちゃんはおそらく僕が今日最後の客であるらしい。
この部屋では一番ゴージャスと言われる診察ルームへと案内される。かなり本格的な内装でさらに広い。ベッドの横にはクスコや空の薬ビンが並べ置かれている薬品棚と分娩台。やはりブラックライト系の照明で、室内が青っぽく怪しげな雰囲気を醸し出している。
マサキちゃんは年の頃で言えば20代中盤といったところだろうか。どちらかと言えばキツネ目系で、身長は決して高くはないが、ボディーバランスが良いのか、出るべきところはそれなりに出ていながらも、すらっとした印象を受ける。
「それじゃあ、シャワー浴びましょうか?」
「シャワーは入りまーす」の確認のあと、手をつないでシャワー室まで導いてくれる。
洗濯機も置いてある、まるで普通の家の風呂場のようなシャワー室でシルバーのスケベ椅子に座らされ、金玉とサオ、そしてアナルを他の店より心もち丁寧に洗う。
「仕事抜けてきたの?」
「うん……、ちょっとタマっちゃって。風呂入るヒマがないからシャワーがてらにと思って……」
「じゃあ、また仕事戻るんだ……大変だね」
僕は風俗に行ったら、たいがいこの言葉のやりとりをする。風俗に来る気恥ずかしさと、チンポが汚いのではないか、という不安を隠す軽口に他ならない。
それにしても彼女、「また仕事戻るんだ……大変だね」の一言がとても「かわいそう」といったトーンである。寂しそうにさえも聞こえる。もしかして、「この後、仕事がなかったら飲みにでも連れていってほしいな……」
と、誘っているようにも聞こえる。ただの思い過ごしだろうが……。それにしても、気さくなしゃべり口調である。このコがプチ女王様に変身するとはちょっと信じられない。
「それじゃあ、はじめよっか?」
他の風俗店ではあまり聞き慣れない台詞である。SMガラミの仕事というのはこのようなスイッチの切り替え的な役割を果たす「宣言」が必要なのかも知れない。
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