もじもじもじもじ……、目も絶対に合わせない。そこまで露骨に恥ずかしがらなくても……、って感じだが、多分他の客の前でも、快活ではなくフニャフニャした接客を売りとするコなんだろう。素人っぽいと言えば素人っぽい。今さらなんだが、風俗というお仕事は「素人っぽい=プロっぽくない」ことが往々として武器になってしまいがちである不思議な商売だ。人気の要因をかいま見る。
手をつないで個室まで同行(これはおそらく店側で決められたマニュアル。「社員教育」はなかなか行き届いていると言える)。僕が導かれた部屋は「庶務二課」。いかにもな事務机の横に、まるで残業で会社に泊まっちゃいましたかのように布団が敷いてある。
そんなゴージャスな設備に目もくれず、とっととシャワーを浴びて、とっととジャマな衣服を脱いでもらう。自慢の事務机は単なる腕時計やアクセサリーを置く台と化してしまう。
「あの……、恥ずかしいんで……、電気暗くしていいですか?」
本当は相手が乱れる様子をじっくりと観察したいので、明るいままの方がいいんだが、そこは折れることにする。すかしたカウンターバーと同じくらいまで照明が落ちる。
「あの……もっと暗くしていいですか?」
これ以上落としたら、ほとんど影しか見えなくなる。好きな男との初ベッドって感じもしなくはないが、銭を払っている強みで、その条件は完全にはのまなかった。討論の末、彼女が二度目に提示した明るさと一度目に提示した明るさの中間でヤルことに談合した。
「セクハラとかしなくていいんですか〜?」
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