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風俗情報

 『中野』(2)

実はこの日、荻窪からの帰り道だった。小さなライブハウスでAVについてのトークショーがあり僕も出演するはずだったのだが、なんと日にちを間違えて前日に行ってしまった。自分のおっちょこちょいさに苦笑しつつ、高田馬場へ戻る途中の乗り換え駅である中野でラーメンでも食べていこうと途中下車したのだ。そして、ふと例の店「N」が目に入ったのだ。なんとなく、このまま仕事場に帰るのもつまらない。ちょっと探検していこうかという気持ちになった。時刻は午後9時。遊ぶにはちょうどいい時刻ではある。

 店内に入る。新宿西口の店と同じように店内も外見どおりの古臭さ。かつては真っ赤であったろうが、今はどす黒く変色した絨毯。薄暗い照明。ほこりっぽい匂い。
 受付のおばちゃんが声をかけてくる。

「ご指名はありますか? 初めて? うちは本番ないけどいいですか?」

 入浴料4000円をここで払う。中で女の子に7000円の、計11000円だという。ちなみに指名料が500円。ずいぶん安い。待合室には先客がいた。ラテン系と思われる若い外国人男性だ。外国人お断りじゃないのだな、ここの店は。彼は指名客なのか、僕の方が先に呼ばれた。
 男性の店員の案内され、階段のところで本日のお相手とご対面。

「×さんです(名前を聞き忘れた…。申し訳ないがとりあえずYさんということで原稿を進めさせてもらう)」

 ついに来た、と思った。これまでの連載で訪れた店では、意外に若い子が現れてびっくりしたものだが、今回は予想通り。つまり、かなりのご年配。おそらく五十はいってるのではないだろうか。スレンダーといえば、スレンダー。誰に似ているかといえば、メトロファルスというバンドのボーカリスト、伊藤ヨタロウ氏を老けさせたような、といってもよくわからないだろうなぁ。まぁ、丸顔で三十代くらいまでは童顔といわれただろうなという感じだ。愛嬌のあるタイプではある。とはいえ、とても性欲をかきたてられる対象とはいえないのだが。

「上なのよ」

 Yさんはそういって階段を昇っていく。外からはわからなかったが、4階建てのかなり大きな店なのだ。部屋数も全部で15部屋もあるらしい。

「でも、水回りが故障してたりしてて、使えるのは9部屋くらいなの」

Yさんは笑っている。

「なにしろ45年の歴史があるお店だから」

45年かぁ。つまり開店は昭和30年代。ソープは風営法上、本格的な立て替えが禁止されているから、古い店はこうやって徐々に壊れていくしかないのだ。

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