こちらに向かってくるのは簿記の専門学校、コンピューターの専門学校に通う学生たちばかり。橋を渡り線路の踏み切りまで来た。立ち止り、目の前のレンガ色をしたマンションを確認した。ここである一室を訪れる。チャイムを鳴らし扉を開けると、先程の電話の主が顔を出した。小柄で細身の体つきをした、おとなしい感じのする店員(27歳)が俺を向かい入れた。白のYシャツにネクタイをしめており身なりはキチンとしていた。
ダイニングキッチンを受け付け代わりしてあり、事務用机がそこに置かれていた。蛍光灯のうす暗い照明と暖房が切ってありフロリングの床が冷く感じられた。
「きょうは何人にしますか?」
店員が聞いてくる。
一人だけのプレイだと1万5000円である。新聞には3時間などと明記してあるのが、
これは店にいても大丈夫な時間であり実際のプレイ時間は15分ほどだ。
「一人にしてくれる」
彼にそう告げると消しゴムほどの大きさのピンクのプラスチック札をくれた。
「これ何するの?」
「それは、女のコが決まったら彼女に渡してください」
「渡せばいいんだね」
「そうでしゅ」
こんな簡単なやりとりの後、店員は着替えのかごをくれた。中にはノリのきいていない旅館の浴衣が入っていた。台所の流しの側に保健室で使う、カーテン生地のつい立てがあり奥で着替える。やれやれ〜、どうなることやら。
ため息が出たのは、オープンしたばかりで、あまり流行っていない店に思えたからだ。
浴衣姿になると風呂場に行ってシャワーを浴びるように指示された。
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