「このコは?」
「きょうは、来てません。ウチは自由出勤ですから。出勤は女のコまかせですから」
男は、そんなことよりも今の遊ぶコを決めてくれといった感じで嫌みたらしく言う。
あー、分かったよ。で、どうする? 結局、十代の若さがウリのコギャルに決めた。すぐに男はプレイルームのあるマンションの地図を書いたメモ用紙を俺に手渡した。
「部屋についたら、女のコに渡して下さい」
「渡せばいいんだね」
「はい、そうです」
簡単なやりとりが終わり、渡されたメモ用紙を見ながらプレイルームに向かう。なんと受け付けをしたマンションから首都高が上を走る池袋六ツ叉交差点を渡り、これまた風俗店が多数入居しているマンションへと歩いてゆくのだった。交差点を渡るとコンビニがあり、そのマンションはすぐ近くだ。
ある一室のチャイムを鳴らすと「どーぞー」とカン高い声がした。
ガチャガチャとドアチェーンの音。わずかなドア隙間から俺は例のメモ用紙を差し入れた。女は俺の顔を確認して、ようやく部屋に入れてくれた。玄関には女のブーツが脱ぎ捨ててあった。
「やあ」
「やあ、コンチワ」
身長152センチほどの小柄で大きな瞳がタレントの山田まりあ似ている女が出迎えた。日焼けサロンに通って肌を小麦色に焼いて、金髪に近い髪は肩まで伸びて軽く毛先がカールしていた。むっちりとした二の腕をヒョウ柄のタンクトップから露出し、胸元は大きく盛り上がっている。Gパンの太ももがはち切れそうだ。そして初対面の俺に警戒をいだいているようだった。
女はアユ(仮名)と名乗った。
さして明るくない8畳の1LDKの真取り部屋をグルリと見渡すと、敷き布団だけが置かれていて殺風景だ。まるで夜逃げでもした後みたいである。
その布団の回りをグルリと取り囲むように、ティシュ箱、ブラッシングのくし、ローションのチューブなどがだらしなく散らかってあった。ゴミ箱から溢れ出て床に、ころがって丸くなっているティシュは生々しいというより不潔感を覚えた。
アユは敷き布団に腰を下ろし、部屋にあるテレビで夕方のニュースを見始めた。
「これから何をするの?」
「何って、あっ、普通にセックスすればいいじゃん」
友だちと話すタメ口で俺に言う。
服を脱ぎながら、いろいろと聞いてみた。
「忙しいでしよう?」
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