約束の19時30分。
「ススギさま、スズキさま。おつれの方がみえております。レジ前までおこし下さいませ」と場内アニウンス。
女は時間ピッタリにやって来た。
アイカワと名乗る女性は面長な顔立ちで鼻すじが通った、きつい目元が印象的であった。誰かに似ているな。そうだ高慢な雰囲気がワイン通で知られる女優の川島なお美にソックリだ。OLといったが胸元の大きくあいた豹柄のタンクトップに薄い生地のカーディガンを羽織り革のミニスカートをはいていた。華やかさに、ある種の下品さが加わっている水商売でもしているみたい。OLは嘘だろう。
お互いに軽く会釈をして店を出て、東京芸術場の方面に足を進めた。並んで歩くと身長170センチほどで俺とたいして変わらない。かかとの高いヒールを履いており細みの体で胸は小さい。これで巨乳ならば街ゆく男たちが振り返るであろう。クールで冷たい雰囲気はこの貧乳のせいかもな。そう思いながら即席のカップルを楽しんだ。
「カップル喫茶は初めてだけど君は?」
「えっ!」
不意の俺の質問にびっくりした顔をするアイカワ。そんな驚いた顔をしなくてもいいのに。アイカワは口数が少なく、やることをしたら終わりというビジネスライクな関係を望んでいそうだ。
「アタシは3回目かな、ここの店は名前を変えて出張性感もしているのよ。てっきり、そっちの客だと思った」
「そうなんだ、写真指名は出来ないんだよね」
「性感ならできたと思ったけど。この前に行った時は大学生のカップルが目の前に座ったんだけどね」
「うんうん」
「最初は周りを気にしてキョロキョロとしてたけど、オッパイを揉んでからが体に火いちゃったみたいで、お互いの体を、むさぼってしてたわ」
アイカワはその時を思い出して照れ笑いをした。
[前のページへ] [毒島平八TOPへ] [次のページへ]
Copyright(c) 2003-2004 YABOU NO TEIKOKU All rights reserved.