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 ニューハーフパブ(3)

 ドアを開けた。蛍光灯の光りがまぶしかった。まっ白い壁にフローリングの床、ダブルベッドの白いシーツ。8畳ほどの広さのワンルームは生活感がまったくなく、キッチリと片付けられていた。1人かけの豪華な白いソファが2個並べられ、壁には店のニューハーフたちの集合写真が飾ってある。テレビもあり側には高価そうなスタンド立てが置いてある。俺はシャツを脱ぎながら、それとなく聞いてみた。
「声は作り声してるの? 全然低くないけど」
「えっ」
「そのお、ノド仏も出てないみたいだしぃ、女のコの声と変わらないね」
「声? 声は中学の時から女性ホルモンを打ってたから」
 ニューハーフは、どうしても野太いオカマ声になるが、ともこは違っていた。
 つまり男性は思春期になるとキンタマに毛がはえたり声変わりをする。
 なにかひとつ勉強になった。
「へえ〜!!」
 おおげさに驚いて場の空気をなごませて、少し込み入った話を聞けた。ともこは15歳で初体験を済ませた。ここでいうセックスはアナルファックである。
 その時の感想を彼女は「嬉しかった」と語る。
 しかし女性を愛せない体なので、人知れず悩んだ。自分は人と変わっているんじゃないかと。男子校を卒業した後は新宿歌舞伎町のショーハプに勤める。が、あまり社交的な性格でなかったために1カ月ほどで店を辞めた。その後、似たような店を転店するが長くは働かなかった。
「人見知りをするから、初対面の人と話のは苦手」
ともこは淡々と言う。
 まあ俺もタクシー時代に客から話しかけられても「ええ、ああ」しか言わなかったからな。ともこと同類なのかもしれない。
「はい、これに着替えてもらえますか」
 そう言って、ともこは白いガウンを俺に手渡した。洗濯がゆき届いたガウンで俺は裸にバスタオルを巻いた上からガウンを羽織った。
続いて1Fへと再び降りてバスルームに案内してくれた。
脱衣所には洗濯機が置いてあり、柱にはブザーがとり付けてある。
「体を洗い終わったら、このブザーを鳴らして下さい」
そう言って、ともこは姿を消した。

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