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 バツイチ姉さんと援助交際(1)

 1畳ほどの広さの個室はテレビが置かれ、アダルトビデオも観れる。その横にはメモ用紙と鉛筆が1本、テイシュの箱が1つ。黒のロッキングチェアに背もたれて期待の電話を待つことになった。会うのを決めるコールは駅前からかけているのだけに絞る。
 相手の女性と話が合うからといって長話はしない。時間の無駄なことはしない。しかし、20分たってもコールが1本も鳴らなかった。この「M」というテレクラは初めてのコールを取ってから2時間でなく、入室してから退室までが2時間の料金計算である。
 俺は夕方18時30分から20時30分までここにいられる。当然のごとく延長をする気はなかった。するとプルプルと電話の高い着信音が鳴り電話器のランプが点滅した。どうやら俺あてにコールがあったようだ。
「もしもし、こんばんわ」(あくまで明るい声で)
俺は相手の声に集中をした。
「あっ、はい、こんばんは」
女の声は普通で、ただ暇をもてあましてテレクラに電話をしてきたようだ。
「ここは西川口だけど、君はどこからかけているの?」
「あたしは所沢の自宅からです」
所沢! アホウ。そんなところまで行けるわけないだろう。
「ごめん、きょう会える人を探しているから」とコールをフロントに戻す。
 前はガチャ切りしても平気だったが、最近は女性に気を使いフロントにコールをやんわりと戻すことになっている。次ぎは神奈川県の川崎市からOL(33)、さらに池袋から学生(21)のコールがあった。どれも好感触でないのでコールを戻す。
 こんなことなら会話だけをして時間になったら退室するか。
 そう思っていた時に…。
「もしもしー、あたし、きよう会える人を探しているんだけど」
やたらテンションの高い声で、俺に話かけてきたコールを取る。
「あっ、そう。で、今 どこから電話をかけているの?」
「蕨駅の公衆電話から。そこは西川口でしょ、電車でひと駅ですよね」と女。
「そうだけど、こっちまで来れる?」

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