6畳ほどの広さに中央にテーブルが置かれスナック菓子、水割りセット缶ビールが置かれてある。男性は50歳前後のサラリーマンが壁ぎわに座ってネクタイをはずしてくつろいでいた。目の前に30代の小柄な愛想のいい人妻が俺と目を合わせた。その横に先ほどのピンクと白の彼女(19歳)。顔は南国顔で若さとボリュームのある体をしていた。俺の横にはスナックでも勤めていそうな少し生活に疲れた30代の人妻が体を楽にして座っていた。目線を隣に移すと20代の生意気そうな女性がタバコをふかしている。ここの部屋にはTVもあり、会話をしてない時は皆、画面を見ていた。
あまり、ワイワイとした感じではなかった。
「何か飲みますか?」
愛想のいい人妻が俺に声をかけてきた。
「ウーロン茶で」
「車で来たのですか?」
「いえ、巣鴨は遊ぶところは少ないですね。カラオケくらいしか思いつかない」
「そんなことないですよ いろいろあるしぃ」
いろいろとは何か含みのある人妻の返事だった。
しかし、俺も積極的に話かければいいのに。なにせ、素人だと何を喋っていいのか迷ってしまう。風俗の取材では「どこが性感帯なの? クリちゃん?」と平気なのに。
ウーロン茶を何回か口につけて飲んだが、この部屋に流れているけだるい雰囲気は一体、何だ? もうひとりの男性も積極的に話すような感じではなかった。
「早く決めないと時間がなくなりますよ」
女の店長が外から声をかける。
「……」
あまり自分好みがいないので本心は帰りたかった。
「じやあ、君で」
俺は横に座っている生活疲れの人妻に声をかけた。そうすると、別室でこれからのデートの交渉となる。別室はカーテンで仕切られた1畳ほどの広さで、ざぶとんが1枚あるだけ。この人妻は身長160センチの細身の体で、美人だが、どこか面長の顔に陰があった。
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