「ここは初めてだけど」
「初めてですか」
「何をすればいいの?」
「何って、大人の割り切った付き合いを…」
「ああ、分かった。ぶっちゃけ、いくらなの?」
俺はめんどうだから手短に聞いてみた。
「いくらって?」
「1万5000円なら出せるけど、ホテル代も払わなきゃいけないしぃ」
「それでいいですよ」
やけにスンナリと決まったので聞いてみた。
「あっ、ちょっと待って、ここにいるコは全員そうなの?」
「若いコ 2人は分らないけど」
「違う人と これから交渉してもいいの? それで決めてもかまわないかな?」
「ええ、いいですよ」
こうして即決はしなくて、もうひとりの愛想のいい人妻と交渉をすることに。
こんな感じだ。
身長150センチほどで、黒のタンクトップの上からでも豊満な乳房が分る。
やたらニコニコと愛想がいい。でも物事をハッキリと言うタイプだった。
「えーつ、1万5000円。あたし、2万円じゃなきゃ」
「さっきの人は1万5000円といったけど」
「じゃあ、あなたが自由に決めて下さいよ」
「ねぇ、この分だと、客は来そうもないから、これで決めたら」
俺は少し揺さぶりをかけてみた。
「だって、お菓子代を千円も取られているから手取りが少なくなる」
甘い声でスネる人妻。
「分かった、2万円と1万5000円の真ん中を取って1万7000円でどう?
こっちもホテル代を払わなきゃならないから」
「分かった、それでいいわよ」
そう言うと安心した顔で別室のカーテンを開けて出ていった。
私が選ばれたという優越感もあるのだろう。俺は生活に疲れた人妻とは目を合わさずに、そそくさとこのマンションの一室を出た。気が引けるが、あくまでビジネスライクなのだ。
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