■哀愁の売女巡り・テレクラフリークス女(2) |
黒い電話をジーッと眺めて何時間も強欲でブサイクな売春婦からの傲慢なコールを待ち続け、気を使いまくってアポして頂き、金を巻きあげられて、触りたくもない汚れきったカラダに触れる。テレクラは痛ぶられるのが好きな究極のマゾだけがなせるマニアックな風俗なのだ。ダイヤルひねって金が減り続けるのを楽しむ、パチンコやパチスロに似てるかもしれない。可愛い娘に即アポ即マン!ってな、キャッチを少しだけ期待していた幻想は完全に崩れた。
1月6日。世の中は仕事初めで忙しい中、オレは午前中から江戸川区小岩のテレクラにいた。小岩は通行人ですら貧乏くさいブサイクばかり。最底辺の売春婦が集うテレクラは華やかな池袋でさえブサイクばかりだったのに、掃き溜め揃いの小岩のテレクラなど、想像しただけでも恐ろしい。もうどうにもでもなれって気分だった。売春婦たちも一月最初の平日は仕事初めなのか、電話は午前中から鳴りっぱなし。彼女らは正月の連休で金を使い果たして、働かなければならないのだろう。小岩も池袋と同じく、百パーセントが援助コールだった。言い値は一万五千円〜二万円で、遙かに安い。入室5分で掛かってきたのは、三十八歳の主婦、15分目の二人目は三十二歳の無職独身女。いつでもアポは取れそうなので適当に話して終わらせたが、所詮は暇で貧乏で生きていて楽しいことなど一つもなさそうな退屈な人たち、ネタになりそうな気の利いた話に発展することはなく、会話してるだけで気が滅入ってくるばかりだった。もう、次の女と会おうと決めて、3本目の電話をとった。
アユミ、二十六歳。市川在住の販売員で、小岩駅前からの公衆コール。言い値一万五千円。「うち、ポッチャリ系なんだけど、いい?」なんて申し訳なさそうに言ってきて、これから起こるだろう恐ろしいことの大まかを想像できたが、オレは「……いいよ」と応えた。駅前のヨーカドー前の噴水に行くと、ビニールの皮もどきのコートに偽物のポロのトレーナー、アディダスもどきのスニーカーを履いたモンスター女がいた。「ポッチャリ系」なんて言うので覚悟はしていたが、体重百キロはあるだろう巨漢を眺めて足がすくんでしまった。アユミはオレの顔をみてすかさずやって来て、「ナカムラさんですか?」と言った。モンスターな肉体だけでなく、一週間くらい洗ってない油っぽい髪の毛に、背中に漂う絶望的なマイナスオーラ。叫んで走って逃げたかったが、生涯に一度くらいこんな女とハメてもいいじゃないか……と修行僧のような覚悟をもって、「ハイ、私がナカムラです。初めまして」とモンスターに言った。
なんでこんな女と会話しなければならないのだろうと胸が痛くなりつつ、グラビアアイドルやAV女優で鍛えた取材術を全開にして、モンスター・アユミに挑んでいった。彼女はテレクラで知り合った男相手に素性を聞かれるのは嫌なのか、最初はあまり話したながらなかったが、だんだんと口数が多くなってくる。