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テレクラ放浪記(10)-3 |
Date: 2004-01-12 (Mon) |
そのあと「あのお店の人、私のことなんか言ってませんでしたか?」と落ちついた声で何やら探りを入れてきた。「今日は何回も電話したから、へんに思われているかと思って」「何回も?」「そうなの」「それは関係ないよ。だって何百人もかけてくるんだから覚えられるわけないね」と答えると、それが頭にこびりついていたのか「そうなんだ、それが気になってえ」とはしゃいだ。
そして汗をぬぐいながら話を続けた。「今日はおじさんで3人目なんです。若い人と会ったんですけど、お話だけで帰られちゃったからあ、ショックですよね。その人がお店の店員さんに私のこと話したかなと思うと」といった。「お話だけじゃ、いやなの?」「そういう意味じゃないですけど。だってテレクラじゃないですか」とはっきりいった。
ホテルに入ってソファに座った彼女は「足のこと聞かなくていいんですか?」といって自分の左足を触った。
なにか言いたいらしいので「そうだね、聞いていい?」と続きを促した。
ミドリの話では、小学生のころ交通事故で左足の踵に障害を受け、それ以来、歩くことに不自由をきたし、さらに足の生育が左足だけ遅れて今のようになってしまったという。
「そうは見えないけど」というと彼女は短ブーツを脱いで私に見せた。
いっとき男性にも流行ったシークレットブーツのように左足だけに「詰め物」が入っていた。
商業高校を卒業したあと、近くの食品会社に就職して伝票の整理などしているという。殆どが女子社員で昼休みの時の話題は男が中心で、それもワイ談にちかいらしく、時にはこれみよがしにボーイフレンドとのセックスのことを聞かされて、ボーイフレンドどころか、ナンパさえされたことのないミドリは一人悔しかったと話した。
2年前、偶然買ったレディスコミックの広告にあったテレクラにかけてみて、知り合った男に誘われて初めてセックス体験。その男とは数回関係したが、縛ったりするので怖くなり絶交。
それ以降は優しそうな人だけと関係するようになったらしい。
これ以上突っ込むとかわいそうに思い、話題を変えた。
「エッチ、好き?」「好きっていうか楽しいじゃないですか、ヘンですか?」「テレクラの男ってどう?」「テレクラって女と男が会ってセックスするところですよね。今日は2人と会ったけど、お話だけで終わり。女からは誘えないし。それで年配の人だったらいいかな、と思って」。
ただで遊ぶには気がひける。金を介在すれば割り切って遊べる。そんな男の心理は十分承知だった。
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