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  テレクラ放浪記(4)-2 Date: 2003-05-22 (Thu) 
 ある30代の人妻とは特に話が合ったわけでもないのに簡単にアポがとれ、会ってそこそこホテルに誘うとついてきた。

 ふつうだったら目が欲情していたり、声がぎこちなくなるのに、その女は口説かれたからしようがなくついてきたというふうだった。はしたない女だと思われないための仕種ではないことは勘でわかった。あまりにもふつうだった。キスをしても舌をからめてくるわけでもなく、彼女の性器に口をつけても反応がないぱかりか、挿入しても、ただ義務的に腰を動かすばかりだった。

 私の口数が減ったのを敏感に感じたその女は終わったあと「ごめんなさい、楽しくなかったようね」といった。

末森ケン 私が「なんか変な感じ。具合が悪いの?」というと「そんなことないわよ」といいながらも顔をそむける。「ほんとうは俺なんかと遊びたくなかったんじゃない?」とさりげなく私がいうと「さすがに取材の人ね。バレバレですよね」といって理由を話してくれた。
 彼女は元々テレクラで男性し話すのが好きで、毎日のようにそこに電話をしている常連だった。彼女はただ相手と話すことだけが目的だった。
それが何ヵ月か続いた時、いつも客に取り次いでくれる店員から「これから繋ぐ客はいい人なので、ぜひ会って欲しい」と懇願され、その男と会い、誘われるままホテルに入ってセックスをしたという。

 次におなじようなことを頼まれた時は気がのらなくて、相手との約束を反故。しばらくしてテレクラに電話をかけると、その店員は「客がいないから」といわれ繋げてくれなかったらしい。それが数回つづくとさすがにおかしいと思う。約束を反故にした仕返しだと気がついた彼女は、それ以降も頼まれると月に一度くらいは男と会うハメになったといっていた。最初のうちは見も知らぬ男とセックスすることに引け目を感じていたのだが、何回も重ねている間に〈秘密の遊び〉の味をおぼえ、なおかつ男からたまに貰う金の魔力に負けてダラダラとここまできたらしい。気弱ながらテレクラ好きの女性の性格をうまく使っていた。

 「他にもテレクラはたくさんあるじゃない」というと「あのテレクラの店員さんの声が気に入っているの」とだけ答えた。
 そこのテレクラは、客の〈成果〉についてリサーチしているようだった。
 会員証とは別にくれた紙のカードにはA、B、C、Dの記号があり、客が帰るときや外出する時はそれに○印をつけていた。次に来た時、CかDにマークがついた客には優先的にコールをまわしているらしいことは私の経験ですぐわかった。電話をかけてくる女のリサーチもやっているようで、たとえばA子という常連女と客がつながって、その客が即アポで外出して帰ってこなかったとする。次回その客が来たときに「この前の女とはどうでしたか?」と聞くと大概の客は正直にいうらしい。たいしていい男でもないその客が「うまくいった」という返事であればA子は〈ヤリマン女〉の評価をうける。
 そういった女の資料をもとに、ある程度そのテレクラでは客と女の出会いを客にさとられないようにコントロールしていた。が、質は悪かろうが女であればいい、という客ばかりでなく、思いがけない出会いを求める客としては飽き飽きする。自然と常連客と常連女の出会いの場所になり、経営者が変わったときにそのシステムはなくなった。
テレクラの店員はけっこうストレスにさらされているようだった。

末森ケン 人件費をケチる店では、10時間以上にわたって一人で店番を任されるケースも珍しくなかった。常連客への対応、新規会員の手続き、女性からのコールの取り次ぎ、個室の清掃、外部からの電話などで食事は立ったまま、トイレにたつのも気が気でないようだった。それ以上なのが、確信的なヤラせる女性コールであっても、客につなげなくてはいけない仕事だから、若い男としてこれくらい辛い職業はない。

 これに違反して自らコールをとり、非番に日にデートして、それが巡りめぐって客に伝わりクビになった店員の話も聞いた。

 ほとんどはアルバイトで、そんな勤務条件から店員の交代は激しかった。
 ある店の若い店員は、今でいうカリスマ店員で、低めの声と落ちついた話し方が電話をしてくる女性から好かれるのか、一階にあるその店の郵便受けの下に、彼あてのファンレターや贈り物が置いてあることも時々あったという。クリスマスやバレンタインデーの朝には、それ専用のダンボール箱を置いておかないと通路にあふれるばかりというから本物だ。店員としての〈掟〉を破らずにいたことで、テレクラグループの幹部になった。

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