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テレクラ放浪記(5)-5 |
Date: 2003-06-11 (Wed) |
娼婦願望の女 麻美(アサミ)
その日、朝10時過ぎから池袋のテレクラにいた私は、お昼ころつながった27歳のOLと、食事とカラオケをおごる条件で会った。
寸胴体型のコブタのうえ目が細い典型的な関東イモ女。こんな女に発情する自分が情けないと思いながらも、ここ1ヶ月以上女っ気がなかった下半身は感情とは別に動きだした。「遊んでからカラオケに行こう」といって三越裏にある2時間3千円のホテルに誘いセックス。とりあえず出すものは出した気分で、あとは女に用はない。「急に腹の調子が悪くなったから帰る」といって女と別れた。
晩飯のオカズに何を買って帰ろうかと母に相談するため、バッグを開け携帯を探すと、ない。
以前ホテルに時計を忘れたことがあったので必ず部屋にあるマッチかライターを持ちかえる習慣が身についていた。ホテルに聞いても、ありません、と返事された。とするとテレクラ以外にない。急いでテレクラに戻るとスタッフが俺の電話機をだし「末森さんにしては珍しくあせっていましたね」と笑った。
いまやってきた女のことを話していると、別のスタッフが「40代以上の希望ですけど、いまその年代の客がいないので出てもらえますか?」と私を見た。なんでも「買い物帰りで時間が少しあいたので、年配の男性で一緒にお茶をしてくれる人を探しています」とテレクラのフロントに電話してきたという。
即アポでその女とは近くの喫茶「滝沢」で会うことになった。
午後4時ころ。だいたい「買い物帰りの人妻コール」はふつう、生活にやつれた薄汚い人妻の売春であることが多い。だが、その妙に丁寧な話し方につられて私は会いに行った。女は入り口から離れた禁煙席で雑誌を読んでいた。
うりざね美人だ。いかにも美容室でセットしたばかりと感じるヘア。声をかけると一瞬俺の頭と腹を見て驚いた様子であったが口には出さず「わざわざお呼びしてすみません」と頭を下げた。三越の大きな袋のとなりにはヴィトンのバケツ。ごく細かいヒダを寄せた白いワンピースは、その直線的なカットからイッセイミヤケだろう。茶のヒールは全く汚れがなくたぶんヨーロッパ製だ。ピンクの口紅といい鮮やかなアイシャドーといい、東京山手4区の上品な若妻の雰囲気である。テレクラにかけてくる女としては異様なハイソ女だと思った。
彼女はヴァンサンカンを読んでいた。
その雰囲気とは別な親しみやすい声で、「お話だけでもと思って」と言われた時、いつもだったら「人と人の出会いってその一瞬が大事なんですよ」とかいって無理やり誘うのだが今日は違う。精液がカラの状態なので女をじっくり観察できた。この女は即ヤリのタイプではない。無理に誘ってオジャンにするより、余裕の中年男を見せて後日アポに期待しよう。そう思った私は彼女の話を聞いた。
それによると、彼女は月に1回ほど池袋に買い物にきた時、時間があまるとテレクラに電話して今まで4人の男と会ったという。ふつう女はプライドから「初めて電話した」とかいうのだが、この女は正直でいい。
「新宿では知り合いに会う危険がある」と笑ったときの口元のホクロが淫猥に感じた。それは現実に淫猥でなくともいい。淫猥であるという思い込みにより相手を口説きやすくなる男の身勝手な原理を私は体得していた。
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