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テレクラ放浪記(5)-7 |
Date: 2003-06-11 (Wed) |
「お電話したのはお話ししたいだけじゃないのよ。わかっていただけます?」。
きたぞきたぞ。電話で話しているだけで勃起した。私は努めて平静を装った。
翌日の午後1時に同じ場所で会うことになった。
その日の彼女はラフなスタイルで遅れてやってきた。髪はストレートに直し、ベージュのサブリナに白いカットソー。シャワーとベッドでくずれても心配ない髪形。しわになっても目立たない恰好。それに薄いメイクとくれば、もうアレしかない。バイブの電池はチェックしてきた。ハイソの女とヤレるのだ。ブスブタババアにしか相手にされない私にだって時には運はある。
彼女は座るまもなく「これ、読んで下さい」とメモを俺に渡しトイレにたった。後ろから見る尻の割れ目のラインがまぶしい。
メモを開けると「よろしかったら誘ってください。割り切ったかたちでね」と達筆で書いてある。
1回こっきりという意味なのか、それとも金か。
ふつうテレクラ女がいう〈割り切ったおつきあい〉は金である。戻ってきた女はなにもなかったように水を飲んでいる。私はストレートに聞いてみた。
「これはお金っていう意味?」「…それでよろしかったら」と小さな声で答えた。
胸の谷間は白く、香水の匂いが悩ましい。それにしても気をもたせる誘いかただ。しかし、なんかおかしい。大手ゼネコンの次期副社長とも目されている男の妻が、なんで風采の上がらない私に売春をしかけるのか。
金に困っているはずはない。食事代、プレゼント代、ホテル代として財布には2万少々ある。やりたい。「ホテル代込みで2万でいい?」
女は「お気持ちだけでけっこうです」と私を見ていった。
「ここは払いますから」と女は先にたちお茶代を会計した。後ろから盗み見するとヴィトンの財布には少なくとも5枚以上の万札。アメックスのカードもチラリと見える。
益々不可解だ。ホストクラブにでも散財しているのか。きっとそうだ。それ以外考えら
れない。
ホテル代は女持ちだ。私は池袋で一番豪奢といわれながらまだ入ったことのないホテル「J・girl」に女を案内した。たぶん1万はかかるだろう。ということは実質1万だ。1万でこの女を抱ける。歩いている間にも勃起は始まった。
サンシャインビルが見える大きな部屋だった。我慢できない。抱きしめてキスをすると「お口クチュクチュしてからね」と避けられた。そういえば「タバコは体に毒ですよ」っていってた。
丁寧な手つきでコーヒーをいれてくれた彼女は「今日はいろんなこと忘れたいの。思い切りして下さい」と目をぶつけてきた。まるで官能小説みたいなセリフだ。
アサミの〈仕事〉は完璧だった。
「独身ではあちらが大変でしょう?」と質問され「時々、風俗でなんとか」と答えると「どんなことするんですか?」とストレートに聞かれ、「教えてあげます」というと「めったにないチャンスね」と笑った。
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