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  テレクラ放浪記(5)-9 Date: 2003-06-11 (Wed) 
 固くなったペニスに器用にゴムをかぶせ、仰向けになった女は脚を大きく開いた。縦線の長い陰唇だ。その割れ目に軽くキスしたあと交わった。数回動いただけで女は目をつむり「いってもいいの?」と俺の腰をつかむ。その真剣な表情を見ながら2回目の射精感を味わった。

 セックスを終えた女はタオルや掛け布団、ティツシュなど散らかったものを几帳面に片付け始めた。その動作に感心した。駅で別れるとき「また来週にでも電話していいですか」とたずねられ「はい、いつでも」と返事してしまった。金もないのに。

 家へ帰ってバッグを整理していると、底に花模様のハンカチが入っていた。
 広げると折り畳まれた2枚の一万円札が入っていた。
 あの女だ。なにかの意思表示なのか。
 終わったあとホテルでトイレにたったとき入れたのだ。なんのつもりだろう。これではホテル代の9千円とお茶代は彼女の持ち出しになってしまう。寝つかれない夜を過ごす。
 その翌日の朝10時ころ決心して彼女の自宅へ電話をかけた。男がでたら切ればいい。
 丁寧な声で女がでた。
 俺の名前をいうと女は一瞬驚いたようで黙っていた。犬の吠える声が聞こえる。
「あの、ハンカチのことで…」電話を切るでもなく「電話番号調べたの?。わたし正直だからいけないのね」

「とにかく私の気持ちがおさまらないんです」

「どうすればいいのかしら?」

「私の友人が洒落たレストランをやってるんですけど。このお金で一番いいもの食べません?。それに、なぜかあなたのことが気にかかるものですから」俺は誠心誠意口説いた。

 10分ほどして、翌日会うことを承諾した。

 彼女はランチとワインの味に満足したようで「おいしい」を連発した。今日はマルーンのワンピースにボルボネーゼのバッグでシックだ。

 が、カメラを向けると「それだけはダメ」とキツイ顔をする。住宅街にあるレスランをでてタクシーに乗り「池袋の北口」と告げると女は俺の腕をつねった。

 ホテルで彼女の話を聞くうちに、私は彼女の心理の不可解さに驚いた。

 概要はこうだった。

 夫は優しくて何不自由のない新婚生活。だが、彼女は1年もそれが続くと不満を持ちはじめる。「はっきりいって夜の生活が楽しくないの」男っぽい夫とは激しいセックスを期待していたのだが、まるで大事な子供をあやすような感じで「まるで処女と童貞みたい」なセックスなのだそうだ。「いちいち、入れていいとか、ここ触っていいとか聞かれて」

「あたしって真面目そうに見えるけど、学生時代は遊んでいたの」英語担当の助教授とは半年の不倫。「ちょっとエスな人だけど、それが癖になったのかな」

 テレクラの話になった。

「テレクラでは5人の人と遊んでいるの」。3人目の男が彼女の性癖を確定させた。「そんなつもりじゃなかったけど、ホテルに入ってお金を渡された時、ふっとなにか感じたの」。お金を介さない2人の男は紳士的なセックス。不満だが口には出しにくい。それに比べ、金を払った男は身勝手になんでも要求する。彼女はその身勝手なセックスに感じるという。
金で買った女だから何をしてもいい、そんな心理なのだろう。その男の気持ちはフーゾク遊びを散々してきた私にはイヤというほどわかる。反対に夫は気を使ってくれるセックス。
「したいようにして」っていいたいけど、お嬢さんのイメージを壊すのが怖いのだ。それで外で欲求を発散させている。前に会った男には、お金を返すチャンスがなかったそうで、そのまま貰ったという。

 詰問するつもりではなかったが「これ以上いじめないで」とアサミは目をそらせた。

「この前みたいにしてちょうだい」といって女は私の前に立った。私は女のスカートをめくり、パンツを下げ性器に指をあてた。そしてキスしながらベッドに押し倒した。そのあと女の上を剥がずに下半身だけほ裸にして後背位で結合した。

 2回目は全身舐めで彼女の舌の感触を愛でたあと、窓際のソファで性交した。膝がガクガクしている。

 私は毎日でも会いたいと思った。最初の女、久美子の再来だ。

 彼女の肢体と柔らかな舌の感触を思い出すたびにオナニーした。

 悪いことに三才ブックスで「全国テレクラ楽勝ガイド」の企画が決まり、私は多摩地区と埼玉、茨城のテレクラ取材に奔走した。

 彼女に電話をかけたかったが「絶対にかけないで。こちらから連絡するまで」といった彼女との約束を守った。気分を害されておしまいにはしたくない。彼女の夫の気持ちがわかるような気持ちがする。

 2週間ほどたって彼女から手紙がきた。ラブレターではなかった。

「週刊誌で拝見しました。サラリーマンというのは嘘でしたね。電話(女性はテレクラのことをこう表現することが多い)で会った女の人のことを侮辱しています。正直におっしゃってくれればよかったのに。楽しかった思い出にします。もう連絡はしません。素敵な人とめぐりあえますように」

 たしか2ヶ月ほどまえにある女性週刊誌の記者にインタビューをうけた。だがその雑誌を送ってこなかったのでボツになったと思っていた。私の顔写真も撮られていた。

 編集部に電話して取り寄せてみると「テレクラにハマる主婦たち」とかいうようなタイトルで、いかに私がテレクラでたくさんの人妻と会い遊んだかをおもしろおかしく書いてあった。私の顔写真に目線はなかった。

 ストーカーになって警察沙汰になるのは正直怖い。仕事もなくなる。私はあきらめた。

 私は彼女の心理を娼婦願望と名付けた。

 その翌年、東京電力のエリートOLが渋谷の神泉駅近くのアパートで惨殺される事件がおきた。

 新聞報道によれば毎夜のごとくホテル街に出没する街娼として有名だったそうだ。私はある雑誌の依頼でこの女のことを聞かれた。渋谷だからもしかしてテレクラにもかけていたのではないかという。私は知らなかった。

 よく行くテレクラのスタッフも知らないという。そのあと現場を取材するというので私も同行した。夜のとばりがおりた花街、円山界隈は静かだった。

 彼女がよく立っていたという地蔵の前に私も立った。意味もなく賽銭を投げた。

 その後の報道によると彼女には数千万の有価証券や現金があったという。痩せた体に光る目。

 私は彼女には一種の娼婦願望があったのでは、と推測してこのことをライターにいったが、取り上げてくれなかった。

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