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テレクラ放浪記(6)-5 |
Date: 2003-06-25 (Wed) |
3、妄想女・久美
三人目の女、久美とは新宿のテレクラで知り合った。
阿佐ヶ谷駅で落ち合ってまもなく私と彼女は近くの住宅街にある立派な和風旅館の一室にいた。
10年ほど前、当時つきあいのあったキャバレーの女と数回来た時から、老舗の料亭を思わせる門構えといい、灯籠のある瀟洒な中庭といい、白い割烹着を着た女中が部屋に案内してくれるや雨戸を閉めてくれるところはまったく変わっていない。
最初に来たとき女中に聞くと昭和20年代の建築で当初は地方からの商人宿だったのがホテルに客を奪われてやむなくこんなになった、と話していた。壁はこの旅館の歴史を感じさせるほどひなびた色だ。茶箪笥などの調度品もその年代の物らしく電話機はエボナイト製でしかも手回し発電のレトロなものだ。
八畳ほどの続き部屋には分厚い緞子の布団が敷かれ、ご丁寧にも盆にはガラスの水差しとコップ。床の間には「高砂」の人形が。それらはレトロを意識したものでなく、古い時代そのままで、いったい何百組の男女がここで交わったのかと感慨にふけった。
久美は私好みの胴長短足の女で、顔が子役で有名になった斉藤こずえに似ているキュートな女である。
私はちんちくりんの女が好きだ。というのは、股下70センチたらずでウエスト1メートルの私は正常位では苦しい。尻好きも手伝って後背位が好きなのだが、大柄でスラリとした女とやると女性の膣が私のペニスの位置よりだいぶ高くなり挿入するのに不便だ。たとえ挿入しても性交運動がちぐはぐになり快感どころではなくなる。さらにベッドより畳に敷かれた布団の上でするほうが体が固定されて腰が動かしやすい。
小柄な彼女とのセックスはほどよく私に快感を与えてくれた。私は浴衣を羽織った久美の体を横にしてシックスナインの態勢で彼女の性器を口で愛撫した。幸いなことに私のペニスと肛門は久美の口に近い。彼女はそれを丁寧に舐めてくれた。
彼女がおかしいことを口走ったのは2回目の後背位性交が終わってすぐだった。
その部屋に置いてあった古い日本人形「藤娘」を指さしてこういった。
「このお人形さんは人殺しよ。だってここの壁には血のあとがある」。
そして「この部屋に泊まって彼は自殺したの。私、彼といたいから今夜はここで泊まってゆく」。
表情が変わった久美の目つきに異変を感じた私は彼女を残して帰った。
その5日後の朝、久美から電話があり「あの部屋の霊魂はなくなったから、また会って」といわれ、不気味な女だがセックスの味はよかったので、和室でなく洋室だったらと条件をつけ再度会った。
窓を開けてのセックスは刺激的で久美の膣内が前回以上に濡れているのを指に感じた。
私は久美をおもちゃにして楽しんだ。
それまでの性体験の99パーセントがフーゾク女相手だったせいか、同じ女とはせいぜい2回までは楽しめたが、3回目になると性欲もなくなり勃起もしない。私は2回の逢瀬を楽しんだお礼を久美にいって別れるつもりだった。着替えを終えた私に向かって久美はいった。
「妊娠したらしいの。責任とって結婚してください」
この女にしては珍しい冗談をいう。
私は「おめでとう。ご懐妊ですね」といった。
久美の目はすわっていた。
私はだまってタバコを吸い次の言葉を待った。内心ドキドキしていてセックスの余韻はすぐに消えた。
久美は「生理もないし、判定薬で陽性がでたの」とぽつりといった。これは本気か。だが、この女とやったのは5日前でしかもコンドームもつけている。私はこのままでいるとなにをいうか不安だったので、「何かのたしにして」と財布から出した一万円札をテーブルに置いた。
「ずるいひと」といいながらもそれをバッグに入れた。久美は先に旅館を出て行ってしまった。
翌日の夜、久美の弟を名乗る男から電話があった。
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