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  テレクラ放浪記(6)-6 Date: 2003-06-25 (Wed) 
 男はドスのきいた声で「アネキが妊娠したといっている。責任とって結婚するか。金でおとしまえつけてくれ」絶対そんなことはないと自信があった私は「妊娠の診断書でもあれば別だけど」と強気にでた。男はなにやらいって電話を切った。
テレクラで知り合った他の男とでもナマでやって妊娠したのだろうか。

風俗体験取材 末森ケン  ヤクザが自宅に来たらどうしよう。警察に訴えてもいい。その夜、私は脅された時のことを考え、反論用に久美との出会いから今日までの出来事をセックスの状況も含め詳しくノートに記録した。

 久美から「診断書ができたから」と連絡があり、中野の喫茶店で待ち合わせた。

 弟も一緒かと思ったが一人で座っていた。久美は書類らしきものを取り出してテーブルに置いた。これが診断書か。私の脈拍は高くなった。診断書にはこう書かれてあった。

「真菌による外陰部のカンジダ症のため3週間の加療を要す」。
しかも日付は2ヵ月前だ。

「君と最初に会ったのは10日くらい前だよ。なんなのこれ?」。
久美は私の質問に答えず、有名なロックバンドSのリーダーの子供を産んだことや女性演歌歌手とレズの関係にあることなど全く別の話をした。そして弟はヤクザで殺人の前科があるともいった。

 が、この女の妄想癖からして信用することはない。

 気が楽になった私は「もう電話しないほうが君のためだよ」といって席をたった。女は追ってこなかった。久美の体液を吸ったことを思い出し、その足で近くの泌尿器科を訪ね診察してもらった。

 数日後行ってみると血液と尿検査の結果はシロで「糖尿病に気をつけて」とだけいわれた。

 しばらくは連絡がなく、あきらめたかと安心していた矢先、久美の親類という女から電話がかかってきた。

 「久美っていいコなの。一緒になってあげて」。

 話によると、私とは結婚相談所で知り合い、プロポーズされ肉体関係をもったが約束を守らないで困っている、とその女に相談したらしい。私は今までの経緯を正直にいった。

 その女は驚いているようで「なにかあったら連絡してください」といい、携帯の番号を教えてくれた。

 そのうちに変なことが続いた。
頼んでもいない女性の下着や化粧品など、通信販売会社から山のように品物が届いた。電話で確認すると久美のしわざと判明。どうして私の自宅がわかったのかついにつきとめられなかった。
私は事情をいって着払いで返送した。すぐに久美の親類の女に連絡した。私に会いたいという。

 その女は久美のカウンセラーだった。
久美の入院していた病院は、アキコとヒロエが入院していた同じS精神病院だった。
彼女の話によると、久美は現在31歳で、小さい時に両親が離婚して上京。その後本人は結婚して子供をもうけたが、3歳の時交通事故で亡くしノイローゼになり離婚。今は定職がなくパートとしてマンションの清掃などしている、という。弟のことを聞くと、その男は弟でもなんでもなく、テレクラで知り合った遊び人で少ない久美の収入を吸い上げているヒモらしい。

 うかつにも私は「テレクラ探検人」の肩書のついた名刺を彼女に渡していた。
彼女は私に気遣いすることもなく、病院でテレクラにかけることが流行っていて、いかにテレクラが悪の温床であるかを私に訴えた。
二人目の女ヒロエがいっていたことは本当で、今でも病院内からテレクラにかける女性患者が電話の前に並び、それを注意すると携帯を持ち込む患者もいて始末に終えない、とこぼした。

 彼女の担当ではないが、ある若い女性患者がテレクラで知り合った男の車に乗せられて連れ去られ、幸いに車がスピード違反で捕まりその女性は保護された事件もあったらしい。
彼女は果敢にも、テレクラに電話して苦情をいったそうな。むろん相手にされるはずもなく、今度は地元の警察にも行って改善を要求したが「規制はできない」といわれ憤慨したという。

「さみしい環境においておくほうが問題じゃありませんか」と私は反論した。
「それはわかります。でも男の人って違う目的で女の人に会うわけでしょう?」「そこは大人だから」とあわてて見当違いな返答をした。

 これが雑誌のインタビューだったら「ビヨーキ女の足元をみてオモチャにするのは楽しいですよ」と答えるのだが、さすがにいえない。

 私はいじわるな質問をした。「下半身のカウンセリングもしてあげれば、いいんじゃありません?」。

 その女は顔を赤くして「ふまじめな人ですね。あなたみたいな人がいるから被害がでるんですよ。もうテレクラのことは雑誌には書かないで下さい」と怒った。いまいましい女め、と感じたが建前論には歯が立たない。私はそれを約束してその女と別れた。

 むろんそんなことをする気持ちはサラサラなく、かえってビョーキ女がたくさん存在していることが判り、益々ビョーキ女を喰ってやろうと勇気がわいてきた。

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