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テレクラ放浪記(7)-2 |
Date: 2003-07-09 (Wed) |
2.人妻、援交女へのリサーチ
人妻から電話がないからといって私が休業するわけにはいかない。
ネタはいつでも提出できる状態になっていなければ出版社からは仕事の依頼はない。
特に週刊誌では依頼があった日の翌日が締め切りであることは通常で、電話を受けてから数時間以内に原稿を送るよう指示されることも多々あった。
〈テレクラライター〉としてデビューしたせいかその殆どが「テレクラにかける人妻の心理」とか「援助交際の実態」とかの内容であった。私はそれに応えるため、会って遊んだ人妻には何気なくリサーチしてみた。
「どうして(テレクラに)電話するようになったの?」「なぜ私と会う気になったの?」「ホテルまでついてきた理由は?」。
もちろんこの言葉とおりでなく、その時の流れで「私でいいの?」「かなり年上だけどいい?」「そんな人には見えなかったから驚いた」などと軽く聞いてみた。
「主人と喧嘩して、むしゃくしゃしていて誰でもよかった」「他の男の人ってどんなエッチするのか知りたかった」と正直に答えてくれた人妻は珍しく、ほとんどは「たいくつだったから」「テイッシュもらって興味があったから」「(私が)よさそうな人だったから」「年配の人だと安心できるから」といったあやふやな返答だった。
しかし、それではマスコミは勘弁してくれない。
私はそんな話を男にとって都合のいい女として勝手にアレンジして「不倫にハマった淫乱人妻の性」「もう戻れない、火のついたカラダは」などと煽情的なタイトルをつけて悦に入っていた。
それ以後も現在まで、人妻に限らずテレクラで会って遊んだ女性には忘れずに、どうして私とセックスする気持ちになったか、をリサーチした。
「嬉しかったな、でもどうして俺みたいな男と遊ぶ気になったの?」と聞いても「そんなこと聞いてどうするの?。どうでもいいじゃない」といわれた時が一番多かったと思う。
そんなとき読んだ心理学書によれば「セックスしたいと思っていても女性はプライドがあるから正直には言えない。それで『いい人だったから』とか『お酒に酔っていたから』『熱心に誘ってくれたから』と自分にとって言い訳のつく理由をつけるものである」と書いてあった。それ以降リサーチには意味がないと感じてどうでもいいと思うようになった。
その年の夏休みの入りばなも相変わらずテレクラに日参していたが、雲霞のごとく押し寄せる援交コールに辟易していた。
それも会ってから「実はヘンなこといってごめんなさい。お金がなくて困っているんです」といって恐る恐る切りだしてくる女とは違い、電話が繋がったとたん「オジサン。きょうの予算はどのくらい?。19歳でぇ、中肉中背でぇ、エッチはゴムつきで2万でぇ、なしだったら3万」「こっちは2人で3P希望。なんでもできるからぁ、一人2万以上でどう?」と、味もそっけもない売春だった。
私のようにテレクラに半日以上もいられる客とは違い、手っとり早く女と会って金で遊びたい客もいると思い重い「ほかの人を探して」と丁重に断っても「ケチじじい、来るなよ」「なにしに来てんの?バカみたい」と罵倒されることもしばしば。だが、〈テレクラ探検人〉としては、どんな女であれ取材対象としなければネタにならない。ちょうど援助交際がマスコミでとりあげられていた時期でもあり、ある週はゲットなしを覚悟で、こういった女たちの顔とボディを確認すべく、私の歳も外観もデタラメをいって約束の場所から離れたところから観察した。それは今でも実行している。
性的対象としての彼女たちはばらばらで、そこにはフーゾクにみられる〈売買の法則〉、つまり美しくて若い女ほど高い商品価値があるという原則はなかった。自己申告どおりに美人でスタイルのいい女は一人としていなかった。どうしてこんな女が売れるのかと思うほど不細工でそのうえ薄汚い身なりの若い女が半分ほどを占めていた。どうにも買う気になれない女の顔は共通して〈オトコ顔〉で寸胴体型だった。私は思いついて、彼女たちに付き合うことにした、といっても買う気もなければ金もない。
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